篠原金融塾 利回り曲線(イールドカーブ)
アメリカの景気動向を示唆する最も優れた指標は米国債の利回り曲線(イールドカーブ)の形状変化だと言われている。そう言われても、債券市場に関する報道は限られているので、なかなかわかりにくい。3/28 14:00時点(東京時間)での利回りを見てみよう。
イールドカーブを議論する時には、2年債と10年債の利回り差に注目する場合が多いが、昨年末の1.512%-0.734%=0.778%(77.8bp)に対し、足許の2年債10年債のスプレッドは、2.525%-2.366%=0.159%(15.9 basis point) とその利回り差は大きく縮小している。景気後退に陥る前には、毎回短期債利回りが長期債利回りを上回る逆イールドを形成してきたという識者が多い。
この利回り差が縮小することをイールドカーブの平坦化(フラットニング)と呼ぶが、今回のイールドカーブのフラットニングは2年債の金利上昇(年初来163.2bp上昇)が10年債の金利上昇(年初来101.3bp上昇)を大きく上回ったことによって起きている。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ率の上昇を抑えるために政策金利(FF金利)の誘導目標を3/16に0.00-0.25→0.25-0.50%へ引き上げたことを受け、短期金利がその影響を大きく受けたためだ。
インフレ退治はデフレ退治同様容易ではなく、今後も連続的な利上げを見込む向きが多い。現時点では米景気は非常に堅調で、短期的には景気後退入りの可能性は非常に小さいと思われ、今後逆イールドの状況となったとしても、今後の景気後退を予測しているとは言えないと私は思う。
FRBが積極的に利上げを実施するとの見方が広まれば、イールドカーブカーブはフラットニングを続けるだろう。しかしながら、フラットニングが景気後退を意味するわけではないので、長期金利の上昇が止まるとは考えない方が良い。FRBはバランスシートの削減(米国債・エージェンシー債、モーゲージ債の売却)を検討中だ。金利上昇要因は利上げだけではない。
今後イールドカーブに関する記事を眼にすることが増えるだろう。逆イールドはアメリカの景気後退の可能性を示唆しているという内容の記事を読む時には、そのロジックに注目すべきだろう。アメリカの足許のCPIは+7.9%、コアCPIは+6.4%であり、これを受け、FRBは利上げを開始したが、アメリカ経済は7%で成長し、賃金は5%上昇している。そんなに簡単にアメリカの景気が腰折れるとは思えない。
そんな中、「指し値オペ」と呼ぶ公開市場操作で、日銀は新発10年物国債を対象に0.25%の利回りで原則として応札分をすべて買い取ると通知した。結果的に日銀の買い入れ額はゼロだったが、こんなことをしていたら、米国債金利の上昇が続く中、日本国債の金利上昇は抑えられ、悪い円安は続いてしまう。
追記
日銀は、28日午後に実施した「指し値オペ」で645億円分の国債を買い入れた。午前に実施した際は日銀への売却に応じる金融機関はなかったが、午後に市場金利が上昇(価格は下落)したことで日銀への売却に応じる金融機関が現れた。
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