篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 12/29/2023
日経新聞では、新年2024年1月1日から「昭和99年 ニッポン反転」という特集を連載するが、その前置きとしての「日本診断」という記事を読んだ。 “日本は「ダメな国」?長引く不調、底力は”そして、 “手負いの日本企業 世界の「推し」に続け”での日本経済の分析に異論はない。日本人はよく総括することが大事というが、ちょっと総括しすぎと思うほど、日本経済の現状が危機的状況であることを分析している。これを受けて、 “明日は日本がNo.1 秘めた強み力に”という記事では、インバウンド、スポーツなど、日本の強みについて言及している。年初から特集が始まるので、楽しみにしたい。
私にとって今年の一番の出来事は、WBC優勝、大谷選手のMVP、ホームラン王の受賞、そしてバスケットボール男子日本代表の48年ぶりのオリンピック出場の決定だ。
日本が野球でアメリカを力でねじ伏せて勝つなんて、子供からおじいちゃん、おばあちゃんまで最高の瞬間だったに違いない。私は、投手が「いかに速いボールを投げるか」、「打者がいかに遠くへボールを飛ばすか」が野球の醍醐味だと思っている。イチロー選手も大好きだが、球場が一番盛り上がるのは、打者ではホームラン、投手では三振だ。それをメジャーリーグで、それも一人でやってのける選手、それが大谷選手なら興奮せざるを得ない。最高の一年だった。
また、中学から大学までバスケットボールをやっていた私にとっては、バスケットボール男子日本代表が48年ぶりのオリンピック出場を決めたのも本当に嬉しい瞬間だった。高校生の大会のウインターカップを観に行こうと思ったが、チケットが完売してしまうほど盛り上がっていることが素直に嬉しい。ひとつだけ気になるのは、テレビで高校生のプレーを見ているとトラベリングと思う場面が多いのはルールが改正されたからだろうか?
さて、来年はどんな年になるのだろう?
2024年は、政治リスクは取るべきだとは思っていない私にとっては難しい年になりそうだ。最大の注目は米大統領選だろう。バイデン米大統領対トランプ前大統領。有力な「第三の候補」が浮上してほしいと思うのは私だけでしょうか?
日本では若者がさらに政治に興味を失うようなことになっているが、岸田首相は24年9月に1期目の自民党総裁任期の満了を迎える。それまで政権が持つかどうかわからないが、総裁選挙前に衆議院総選挙を行うことになるかどうか?
金融政策は、アメリカ、ヨーロッパの利下げに対し日本の利上げの年というのが市場の見方。市場の織込みは行き過ぎていると考えているが、方向としては、FRB, ECBの利下げに対してBOJが利上げという金融政策の方向の違いから、ドル円、ユーロ円は下値を試すことになるだろう。株については、金融政策が大きなサポート要因となるが、アメリカ、ヨーロッパの景気減速がどうなるのか次第だ。
日本については、年初日経新聞で組まれる特集のような前向きなチャレンジが広がっていくか次第だろう。日本の成長余力がないのであれば、人口が今後も増えると言われているアフリカなどへの進出、投資、もしくはインパクト投資の世界で日本よりも先を走っているヨーロッパへの投資を検討すべきだろう。マクロ的には、実質賃金がマイナスの状況からプラスの状況に転換できるかが大きなポイントとなるだろう。
今年も一年ありがとうございました。来年も引き続きよろしくお願い申し上げます。
以下日経新聞の抜粋です。ご参考まで。
日本は「ダメな国」?長引く不調、底力は
昭和の時代、日本は世界第2位の経済大国だった。今は名目GDP(国内総生産)で米国と中国を大きく見上げる。ドイツにも抜かれ4位に転落しそうだ。国民1人当たりのGDPは、2022年に3.4万ドルと世界32位で、主要7カ国(G7)で最下位に沈む。労働生産性も22年までの30年間で8ポイント弱しか上がらなかった。寝不足の日本人を尻目に、G7諸国の生産性は2〜3倍に伸びた。
デフレ習慣が「安いニッポン」をもたらした。身を削って価格を下げ、企業の筋力(稼ぐ力)が衰える悪循環を生んだ。マクドナルドのビッグマックの価格で見てみよう。1989年は370円だった。円換算で日本より高い国はデンマークやスウェーデンなど、ごくわずかだった。いまは450円の日本に対し、スイスでは2倍以上の約1100円を払わなければ食べられない。
気づけば国の財政は借金まみれだ。一般政府債務残高のGDP比は90年代後半の金融危機を境に膨らみつづけ、いまや250%を超えてG7で最悪の水準にある。
新幹線や都市鉄道のような大動脈は高い収益力を維持するものの、地方の毛細血管は赤字が続き、目詰まりが進む。道路の多くは「不惑」を超え、2040年には道路橋の約75%、トンネルの約53%が建設から50年以上経過する見通しだ。使われない道路、古くなった橋をただ延命するのは難しい。時代に合った交通網の再検討が欠かせない。
働き手の中心となる15~64歳の生産年齢人口は1991年は全体の69.8%を占めた。2022年に58.4%まで低下し、G7で最下位に沈む。中国や韓国と比べても10ポイント以上低い。65歳以上の高齢者の比率は22年には29.9%と、モナコに次ぐ世界第2位の高水準にある。世界的にも突出する速さで日本の高齢化が進行している。
V-Dem研究所による「参加型民主主義」の成熟度の指標はG7で最も低い。次代を担う20代の衆院選の投票率も昭和後期に6割あったのに、平成に入ると30%台まで下がった。直近の2021年は36.5%で、全体の55.9%を大きく下回る。
金融・保険を除く民間企業の経常利益は2023年度上期に55兆円を超えた。過去最高だった22年度を上回るペースだ。企業の現預金は22年度で339兆円と89年度の2倍弱まで増えた。ため込んだスタミナを研究開発や設備投資に振り向け、成長につなげる姿勢が欠かせない。
手負いの日本企業 世界の「推し」に続け
世界輸出シェアはピーク時の1986年には1割を超えていたのに、2022年には3%まで下がった。90年代の円高で生産の海外移管が進み、家電や半導体など主要な輸出品目の競争力は低下した。
台頭したのが中国だ。世界シェアは2001年に日本を超え、22年には17%に高まった。米国やドイツなども日本ほどは落ち込んでいない。傷は年々、深く大きくなっている。テレビの世界シェアは10年の35%から20年には11%に落ちた。スマートフォンでは米アップルや韓国サムスン電子、中国の小米(シャオミ)が席巻する。ハードからソフトに付加価値がシフトする趨勢も見誤った。クラウドビジネスでは基盤を提供するIaaSやPaaS、ソフトウエアを提供するSaaSの主要3領域すべてでシェア3%以下だ。
大きなダメージを負ってようやく気づいた。デジタル産業を根幹から立て直すときだ。産業の新陳代謝が落ち、新しいモノを生みだす力は弱まった。国連の世界知的所有権機関(WIPO)による「グローバル・イノベーション・インデックス」で日本は23年に13位で、韓国(10位)や中国(12位)より低い。07年には米国などに続いて4位だった。
総務省や経済協力開発機構(OECD)の調査結果を見ると、日本の大学の研究開発費は21年に00年に比べて1.2倍とほぼ横ばいだった。韓国は6倍、中国は18年時点で19倍だ。各国が人工知能(AI)や医療・バイオなどに資金を振り向けている。スイスIMDの「世界人材ランキング」で23年、日本は64カ国・地域中43位と過去最低だった。主要7カ国(G7)でも最下位で、人口がはるかに少ないバーレーン(27位)やラトビア(39位)よりも下位だ。
特に評価が低いのは「管理職の国際経験」(64位)や「語学力」(60位)。14年には3位だった「従業員訓練」も35位に低下した。デジタル化など構造転換が加速するなか、かつて競争力を支えた職場内訓練(OJT)は陳腐化した。制度疲労を放置したツケが出た。
設備投資は機械や情報・通信、輸送などの合計で1995年から2021年の間に2割程度しか増えなかった。フランスは8割増、米国やカナダは2倍だった。コスト削減を優先する縮小均衡型経営が産業をむしばんだ。
まだ治療の余地はある。米中対立が深まり、経済安全保障の強化が叫ばれるようになった。生産や研究開発の拠点として日本の価値が見直されている。資金を国内産業の強化に投じる意識の転換が求められている。
世界の株式ファンドが指標にする「MSCI ACWI」指数。対象に含まれる日本企業の割合は23年10月に5.5%だった。1994年の27%から5分の1まで落ちた。94年には構成銘柄の上位10社のうち半数をトヨタ自動車や日本興業銀行といった日本企業が占めていた。この30年間で全て姿を消した。
指数から外れると連動する投資信託からの資金流入が途絶え、株価下落を招く。円安でドル換算の時価総額が目減りしたことも指数からの除外を加速させている。証券取引所の株式売買代金はいわば取引の万歩計だ。活動量が落ちるほど、体力も魅力も乏しく映る。2022年の売買代金を見ると、日本取引所グループは5.8兆ドルだった。世界では米国のニューヨーク証券取引所(30兆ドル)、ナスダック(27.2兆ドル)、中国の深圳証券取引所(18.5兆ドル)、上海証券取引所(13.9兆ドル)に次ぐ規模ではあるものの、米中との差は年々拡大している。
日本の賃金は低体温症苦しんでいる。平均年収は過去30年横ばいが続く。米ドル換算では米国は5割、ドイツは3割上昇し、韓国は2倍だ。低い給与は働き手の意欲をそぎ、草食消費に拍車をかけた。
雇用者の平均年間労働時間は30年で2割減少した。米国や韓国より1〜2割短い。日本の「モーレツ社員」は過去のもの。少子高齢化で人手不足はさらに深刻化する。シニアや育児女性の活躍が欠かせない。業務効率の向上と賃上げの好循環が日本経済の基礎体温を引き上げる。
日本コンテンツは世界の「推し」だ。米グーグルによれば、2004~23年に世界で最も検索数が多かったアニメは「NARUTO―ナルト―」、テーマ音楽では「スーパーマリオブラザーズ」、ゲームの解説や攻略法では「ポケモン」だった。歌(検索期間は23年)ではアニメ「推しの子」の主題歌だったYOASOBIの「アイドル」が1位になった。
明日は日本がNo.1 秘めた強み力に
国民にとって生活の豊かさはいわば「体幹」だ。若返りや肥満脱却にはトレーニングが欠かせない。
国連開発計画(UNDP)が公表する人間開発指数(HDI)が参考になる。2021年版で日本は主要7カ国(G7)で4位で、191カ国・地域中19位だった。1990年からほぼ一貫して上昇し、21年に過去最高を記録した。米国は21位、中国は79位と日本より低い。大阪大の堂目卓生教授は「理系に進学する女性の少なさなど、教育におけるジェンダー格差の是正が指数改善へ重要になる」と語る。一部に衰えがみえるとはいえ、社会インフラの質の高さは折り紙つきだ。乳児死亡率や若者失業率は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最も低い。交通死亡事故の発生率の低さもノルウェー、スウェーデンなどに続く7位だ。
国際空港の定時就航率は羽田空港が世界トップ。日本人にとって当たり前の医療アクセスや治安の良さ、交通利便性といった頑丈な背骨はいまも世界に誇れる状態だ。
伝統や食文化、豊かな自然はユニークな魅力を保っている。観光地としての人気は高く、米国の大手旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」の読者投票で「再訪したい国」1位に選ばれた。円安を追い風に、10月の訪日外国人数は新型コロナウイルス禍前を超える251万人に達し、地域経済を潤している。
大谷翔平、渡辺雄太、久保建英――。体格やパワーで欧米に劣りがちだった日本人が、世界で華々しい活躍をみせていることも見逃せない。夏季五輪の金メダル数は21年の東京五輪で過去最多を更新した。24年のパリ五輪での躍進にも期待がかかる。野村総研がSNS投稿をもとに算出する「空気感指数」をみると、野球のWBC優勝を決めた23年3月に「活気」が最高潮に達した。アスリートの活躍をきっかけに病も不景気も吹き飛ばしたい。
社会にはびこる不平等は万病の元だ。積年の課題だったジェンダー格差は徐々に改善しつつある。男性の育休取得率は12年度の1.89%から22年度に17.13%に上昇した。選挙では23年春の統一地方選で、市議当選者(政令市除く)の女性比率が22%と初めて2割を超えた。ただ世界に劣後した状況に変わりはない。男女平等の度合いを示す23年の「ジェンダーギャップ指数」では125位で過去最低となった。伸びしろとみて、重点的に体質改善したい。
企業は地力を取り戻しつつある。日経平均は23年4月から大きく伸び、一時33年ぶりの高値水準となる3万3000円台に回復した。パフォーマンスだけ見れば米国のS&P500種株価指数を上回る。24年1月に始まる新しい少額投資非課税制度(NISA)が「貯蓄から投資」をさらに加速する。
「半導体」にも再興の芽が出ている。日本は製造装置や部素材で高シェアを維持してきた。24年には台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場が稼働する。
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