篠原金融塾 イノベーション グローバルマーケットウィークリー 12/12/2025
- 篠原竜一

- 12月14日
- 読了時間: 4分
ジョエル・モキイア氏、フィリップ・アギヨン氏、ピーター・ホーウィット氏による「イノベーション主導の経済成長」を理論と歴史の両面から解明した研究に2025年ノーベル経済学賞が授与された。
モキイア氏は、経済史の観点から、産業革命以降の持続的成長を分析。技術進歩が成長の前提条件であることを歴史的に解明。アギヨン氏とホーウィット氏は、「創造的破壊(creative destruction)」の理論モデルを構築。新しい技術や製品が古いものを駆逐するプロセスが持続的成長の原動力であることを数学的に示したとのことだ。
モキイア氏は、『The Lever of Riches: Technological Creativity and Economic Progress』 (1990)で、産業革命以降の経済成長を歴史的に分析。古典的成長理論から脱却し、イノベーションを成長の中心に据えた。そして、『The Gifts of Athena: Historical Origins of the Knowledge Economy』 (2002)で、「役立つ知識(useful knowledge)」概念を提示。科学的理解がイノベーションを持続的に生み出す条件であると論じた。
AIは既存産業を破壊するが、新しい職業や産業を創出する。課題は、短期的にはイノベーションは、失業者を生むため、政府の役割は、革新を妨げず、雇用を守る政策をどのように実施するかということだろう。
モキイア氏は、イノベーションは偶然の発明ではなく科学的知識と制度の蓄積によって持続すると主張している。イノベーションが成長の源泉である以上、投資家はより技術革新を生む制度・環境に力を入れている国、分野に注目すべきということだろう。
今年の経済学賞が市場参加者の行動に影響を与えるとすれば、イノベーションは新しい成長機会を生み出すため、グロース株の評価を押し上げる一方、既存技術に依存するバリュー株には置換リスクが生じる。特許出願や新技術の発表が今まで以上に株価に即座に反映されるようになるかもしれない。しかしながら、イノベーションは不確実性を伴うため、株価変動を大きくし、リスクプレミアムを押し上げることになるだろう。
国としては、制度的にスタートアップや研究開発を促進、イノベーションを後押しすることがより重要になるということだろう。
先週のグローバルマーケットでの最大の注目は、連邦公開市場委員会(FOMC)。FOMCでは、主要政策金利の誘導目標を0.25ポイント引き下げ、3.50~3.75%とすることを9対3の賛成多数で決めた。2人は金利据え置きを支持し、1人は一段と大幅な利下げを求めた。利下げに反対したカンザスシティー連銀のシュミッド総裁は、金利が物価に下押し圧力をかけ、経済活動を鈍化させているという証拠がみられないため反対票を投じたと説明した。
一方で、今回のFOMCでは、2026年は、関税の影響が薄れ、住宅コストが物価の伸び減速に寄与してインフレが下がるという見方が優勢であり、3.50~3.75%という政策金利は、引き続き若干抑制的な水準という理解をしているものと思料される。
利上げが必要になるようなインフレと、利下げを必要とするような雇用情勢の鈍化の同時進行に対し、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「ツールは一つだ。二つを同時にはできない」と語ったことが印象的だ。

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