篠原金融塾 インフレーション or スタグフレーション? グローバルマーケットウィークリー 11/12/2021

金融政策の不透明感が増せば債券市場が右往左往するのは当然だ。


10月の米消費者物価指数は、前月比0.9%上昇。前年同月比の上昇率は6.2%に達した。食料品とエネルギー品目を除いたコアインフレ率も前年同月比4.6%上昇し、年間上昇率はどちらも30年以上ぶりの高い伸びとなった。債券金利は大きく上昇している。


アメリカの中央銀行であるFRBは引き続き、サプライチェーンの混乱が解消されればインフレ率が鈍化するとの考えを変えていないが、そのプロセスが始まらない。それどころか輸送費やコモディティ価格の上昇が経済に影響を及ぼす中、インフレ圧力がより広範な商品やサービスに広がっているのは明らかだと感じているのは私だけではないはずだ。この時期になると大々的に宣伝が始まるスタッドレスタイヤも実際に店に行くと在庫がない。


COP26も何とか合意できたようだが、インフレをさらに加速させるという側面もあるかもしれない。環境問題を考えれば、化石燃料は廃止し、再生可能エネルギーへのシフトを加速する必要があることは誰でも理解できるが、それが現行の世界経済に与える影響は思っている以上に大きい。バイデン米大統領のエネルギー政策の基本方針は、連邦政府の土地における全ての掘削活動の中止であり、私は専門家ではないので判断は出来ないが、環境問題を考えれば正しい政策なのでしょう。しかしながら、ガソリンと天然ガスの価格は、世界の需要が伸び、米国の生産が鈍る中、大きく上昇しているのも事実だ。だからと言って、足許のバイデン政権のエネルギー対策が大きく転換されるとは思えない。従って、エネルギー価格、コモディティ価格は、当面の間引き続き上値を試す可能性が高い。


また、米労働省が発表したReal Earnings Summaryという統計では、10月の平均時給がインフレ調整後で0.5%低下している。実質賃金を年初から見てみると、年初来2.2%低下している。これほど莫大な政府支出を実施しているにもかかわらず、アメリカ国民の実質購買力が低下していることはとても気になる話だ。


セントラルバンカーにとっても、判断がとても難しい状況だ。時期尚早の利上げは景気を冷え込ませる可能性が高い。これは何としても避けたい。同時に、何もしなければインフレサイクルに拍車をかける可能性もある。頭を悩ませているのはFRBだけではない。ヨーロッパの中央銀行であるECBにとっても悩ましい問題だ。


足許の債券市場の大きな問題は、セントラルバンカーにも市場参加者にも、どこまでのインフレ率上昇なら許容されるのかがわからないということであり、市場参加者はこのボラタイルな債券市場に当面付き合わざるを得ない。


特に難しいのはインフレーションという問題について誰も肌感覚がないということだ。70年代のアメリカはって言われても、経済システム自体が大きく異なり比較することが難しい。既に教科書の中での出来事だ。プライマリー・ディーラーで働く債券トレーダーの殆どは70年代には生まれてもいない。ボルガ―議長、グリーンスパン議長時代を経て、インフレは沈静化され、金融政策の透明性が高まったことにより債券市場のボラティリティは大きく低下、その後はディスインフレーション下での金利低下の歴史だ。これからもその流れが続くか、70年代とは違う形のインフレと戦う必要があるのかはまだわからない。11月25日のサンクスギビングデーを経て、本格的なホリデーシーズンを迎えるアメリカの市場流動性は大きく低下する。


中央銀行が態度を変えなければマーケットはスタグフレーションを先取り、イールドカーブはフラットニングする。強い経済指標が続けばベアフラット、弱い経済指標が続けばブルフラット。ポジションの傾きによって大きく動くアウトライトでのリスクテイクは非常に難しいとしか言いようがない。






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