篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 10/30/2026
米国株が売られている。
景気後退懸念が高まっているわけではない。中間選挙前に調整が入っているだけかもしれないが、市場の関心は、「米国経済は大丈夫か」ではなく、「AIへの巨額投資は本当に利益につながるのか」ということだろう。
NVIDIAを筆頭に、Microsoft、Meta、Amazon、Googleといった巨大テック企業は、AIデータセンターや半導体、クラウドインフラへの投資を競うように拡大している。
私も以前から「AIが未来を変える」ことを信じてきたが、市場が気にしているのは、投資額が大きすぎないかということだ。市場参加者は成長ストーリーが好きだが、その投資がいつ利益として回収されるのかがまだ見えないことが気になりだしている。AI市場がこれからも世界経済をリードすることは間違いないが、足許の相場の注目が「期待」から「収益」に移り始めているのかもしれない。
さらに金利環境も無視できない。
金利が低い時代には、遠い将来の利益に高い価値が与えられる。しかし高金利環境では事情が変わる。10年後の利益より、今日のキャッシュフローの価値が高く評価される。
先週は連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日銀という世界の三大中央銀行が相次いで金融政策を決定した。
FRBはFF金利を3.75~4.00%で据え置いたが、声明では、「インフレは依然として高い」との認識を維持し、追加データを確認するまで様子を見る姿勢を示した。しかしながら、2名の委員が「即時利上げ」を主張し反対票を投じたことで、市場は12月追加利上げの可能性を強く意識し始めている。
ECBも預金ファシリティ金利を2.50%で据え置いた。ECBは、エネルギー価格上昇はインフレ上振れリスクと明言、景気減速リスクはあるものの、まずは物価安定を優先する姿勢が鮮明だった。12月会合での利上げは依然選択肢だ。
日銀は政策金利を1.25%で据え置いた。ただし市場が注目したのは、長年、2%物価目標達成はまだ先と言い続けてきた日銀が、基調インフレは概ね2%目標に整合的な水準との認識を示したことだ。そのため市場では、12月または来年初めの追加利上げ観測が高まっている。
今回の日米欧会合を一言で表すなら、思ったよりタカ派だったということだろう。エネルギー価格上昇、AI需要拡大による設備投資、賃金上昇圧力によって、各国中銀は再びインフレとの戦いを意識しているということだ。
今後の最大の焦点は12月会合だ。仮にFRB、ECB、日銀のうち複数が追加利上げに動けば、世界の株式市場は再び金利ショックに直面する可能性がある。
斯かる状況下、AI投資を続ける企業、利益回収時期が不透明な企業、株価上昇が期待先行だった企業ほど売られやすくなっているのかもしれない。
今回の市場調整は、「AIの将来性を否定している」のではなく、「AIの将来性は認めるが、その利益計画を示してほしい」というのが私の理解だ。期待の時代から収益化の時代へ移り始め、AIブームの勝者が誰なのかを見極める局面に、市場が入ったのかもしれない。

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