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篠原金融塾 トマ・ピケティのR>G  グローバルマーケットウィークリー 8/14/2026

米オンライン決済大手ストライプのコリソン最高経営責任者(CEO)が自身のXのフォロワーに対して実施した経済見通しに関するへのアンケートでは、今後5年間で経済成長率が2倍の年平均4.3%に加速し、就業者数は約8%減少するという結果になったそうだ。

 

AIが経済産出量を大幅に増やす一方、数千万人の労働者が不要になる、雇用なき成長という世界だ。

 

このアンケートの結果が正しいかどうかはわからないが、これからのグローバルマーケットの大きなテーマであることは確かだろう。

 

アメリカの株式市場は、関税や戦争、原油高、期待外れの雇用統計、GDPなどファンダメンタルズをものともせず、株価は最高値圏を維持している。

 

フランスの経済学者で、世界的ベストセラー『21世紀の資本』を書いたトマ・ピケティ氏は「なぜ格差は縮まらないのか」を歴史データで証明した経済学者だが、その核心は、 R>G(資本収益率>経済成長率) というシンプルな不等式。これが「格差は努力ではなく構造で広がる」という彼の主張のすべてを支えているが、まさに今のマーケットそのものなのかもしれない。

 

ピケティのR>G、資本収益率が経済成長率を上回るという構図は、金利・インフレ・資産価格・企業収益のすべてに当てはまる。そして、現在の市場環境はR>Gをさらに強化する方向に向かっているような気がする。

 

まず、世界的な資産価格の強さがRの優位を示している。米国株は高金利下でも企業収益が落ちず、AI投資が利益率を押し上げ、S&Pは成長率を大きく上回るリターンを維持している。日本株も同様で、賃金上昇や潜在成長率がわずかに改善した程度では、資本市場の勢いに追いつかない。企業は自社株買いを続け、資本効率を高め、株主に還元する。労働分配率が上がらない限り、GはRに追いつくことができない。

 

不動産も同じ構図だ。世界的に住宅価格は高止まりし、金利上昇で本来なら調整が起きるはずの局面でも、供給制約と資産需要が価格を支えている。賃金の伸びよりも不動産価格の伸びが速いという現象は、R>Gの典型例だ。資産を持つ者は資産価格の上昇でさらに豊かになり、持たざる者は参入コストが上がり続ける。

 

債券市場でさえR>Gの構図が見える。高金利環境は本来、労働所得の改善を伴うはずだが、実際には賃金の伸びは限定的で、インフレ調整後の実質賃金は伸び悩む。一方で、資産を持つ投資家は4〜6%の利回りを確保し、複利で資産を増やす。労働所得の増加率よりも、資本所得の増加率の方が高いという構造だ。

 

こうした状況を鑑みると、ピケティのR>Gは「格差の理論」ではなく「市場の現実」に変わっている。資本市場は成長率を上回るリターンを生み続け、企業は利益を株主に還元し、資産価格は賃金を置き去りにする。投資をしている者とそうでない者の差は、努力ではなく構造によって広がる。今のマーケットは、ピケティが描いた未来をそのまま再現している。

 

そして、この構造は、政策や景気循環では簡単に変わらない。AI投資は資本収益率をさらに押し上げることになるだろう。

 

日本の少子高齢化は、直感的には「人手不足なら賃金は上がるはず」だが、現実は違う。高齢者は消費より貯蓄が多く、企業の売上が伸びないため、企業は賃金を上げにくい。若年層が少ないことから、新規需要が生まれにくく、成長率が上がらない。高齢化で社会保障費が増え、企業の負担が増え、賃金に回しにくい。つまり、日本の人口動態は G(成長率)を押し下げ、賃金の伸びを抑える構造要因になる。

 

財政制約は成長率を引き上げる余地を狭める。日本は歳出の約35%が社会保障。高齢化により毎年数兆円規模で増えている。その結果、政府は「成長率を上げる投資」に使えるお金が減る。本来、成長率を上げるには、教育投資、インフラ投資、技術投資、子育て支援、移民政策などが必要だが、財政赤字が大きい国ほどこれができない。つまり、日本の財政制約は G(成長率)を引き上げる政策余地を奪う。

 

従って、R>Gは、もはや一時的な現象ではない。投資家にとっては、この構造を理解することがとても重要だろう。

 

一番気になるのは、株式相場がGDPと大きくかい離している理由が、バブルである場合だ。しかしながら、バブルの時は通常、株価は利益より速いペースで上昇し、株価収益率(PER)で見たバリュエーションが高くなる。だが米企業の利益はこの1年間、株価より速いペースで増加おり、バブルとは言えない。

 

加えて、インフレとはモノの値段が上がることだが、同時に日本円の値段が下がることだ。同じ日本円の量で買うことが出来る株式、不動産は少なくなる(値上がりする)ことは自然な流れであり、バブルを心配していると手が出せない。

 

世界的に金利が上昇しており、さらに成長率を押し下げる要因になるかもしれない。R>Gの時代は、労働者は不況下の物価上昇に苦しみ、資産を保有するものは、不況下にも関わらず物価上昇で資産価格が生み出す富が増え、格差がさらに拡大する時代なのかもしれない。



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