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篠原金融塾 日米協調介入 グローバルマーケットウィークリー 8/7/2026

アメリカの7月の雇用統計によると、非農業部門就業者数(季節調整値)は2万3,000人減と、予想に反して減少した。加えて、5月と6月の就業者数の伸びは合わせて10万3000人、下方修正された。失業率は6月の4.2%から4.1%に低下したが、これは労働市場から完全に退出した人が増えたことが主因であり、高インフレが続く中、米経済の基調的な強さにあらためて疑問符がつきそうだ。

 

米連邦準備制度理事会(FRB)にとっては、悩ましいニュースだろう。先月の連邦公開市場委員会(FOMC)では、高インフレを踏まえて3人が政策金利の引き上げを支持したが、景気の先行きが怪しくなってきたことから、インフレだけに軸足を置いた金融政策を再検討する必要があるのかもしれない。

 

日本にとって大きな出来事は、米財務省が、円相場を安定させるために、日本当局と連携して異例の協調為替介入を実施したことだろう。両者は大規模な円買いを行い、その規模は何百億ドルにも相当する可能性が高いと言われているが、大きな特徴は、アメリカ側の介入が、ドル円ではなく、ユーロ円介入であったということだ。アメリカとしては、今回の対応はドルが高すぎるということではなく、円が安すぎるということだろう。

 

米政府は、日本政府が保有する米国債を担保としてドル資金を貸し出す信用枠も提供するという。この措置は、日本が米国債を売却することなしに為替市場に介入する余地を拡大するのが狙いだ。

 

仮に日米当局で、1ドル150円まで戻そう、140円まで水準を是正しようというような合意があれば別だが、そうでない限り、私も含め介入の効果は長続きしないと考える人が多いだろう。

 

円が弱い本質的な問題は何か?

その問題解決に取り組まない限り、根本的な解決にはならないだろう。

 

前回日米協調介入が実施されたのは1998年6月。日本の金融不安・アジア通貨危機で円安が急進する中、介入が実施されたが、この時にリーダーシップを発揮したのは、橋本首相とルービン財務省長官。そして、実務面では、アジア通貨危機に対応していた、後にハーバード大学の学長に就任するサマーズ副財務長官。日本側では、大蔵省(現財務省)の榊原英資財務官(ミスター円)がアメリカ側(ルービン、サマーズ)と直接交渉し、協調介入を実現させたと言われている。

 

アメリカの介入の政策決定権は財務省にあるが、ドル売り介入は米国内の流動性に影響するため連邦準備制度理事会(FRB)との調整が不可欠だが、当時の議長はグリーンスパン氏。そして、米財務省の指示を受けて実際に市場でドル売り・円買いを執行した人物が NY連銀の外国為替デスク責任者であったフィッシャー氏。その後世界最大の資産運用会社ブラックロックで債券部門のトップを務めた人だ。

 

この時のアメリカは、凄いメンバーだ。90年代半ばから、2000年にかけて、アメリカの金融自由化、規制緩和を進め、デリバティブ市場の拡大を大きく推し進めたことで知られている。リーマンショックを防げなかったのはこの時の政策が原因だという向きもいるが、日本が失われた30 年に突入する中、強いドル政策を推進、財政赤字を大幅に削減、資本がアメリカに流入、株式市場を大きく押し上げた功績者たちだ。

 

そんな彼らでも円安を防ぐことが出来なかったのは、日本のファンダメンタルズの改善が見られなかったからだろう。

 

ベッセント財務省長官は、日本側に円安を防ぐための政策対応を求めている。日銀が利上げを含む金融政策の正常化を進めるべきだということだろう。日本の金融政策を決めるのは当然ながら日銀だが、ベッセント氏に、円安の根本原因は日本にあり、日本側で解決しろと言われているような気がする。

 

今は大きな議論にはなっていないが、日本政府の債務残高は国内総生産(GDP)比230%。1%台の低成長、少子高齢化が加速する中、日本政府の債務返済能力に疑問が生じるようなことになれば、円安はこんなレベルでは済まない。この懸念が強まれば、日本資産への需要は落ち込み、円に対する需要は大きく減少することになる。

 

斯かる状況下、日銀が慎重な姿勢を長く維持すればするほど、介入効果は長続きしないだろう。仮に、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利上げすれば、日本との間の金利差が拡大し、円売りが強まる。週末に発表されたアメリカの雇用統計が弱かったのは日本とって時間稼ぎになる良いニュースだ。金融政策だけで解決するもんではないものの、少なくとも日銀が金融政策の正常化に向けてもっと積極的に動く必要がある。

 



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