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篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 8/8/2025

2008年の金融危機以降、政府管理下にある住宅金融大手ファニーメイ(Federal National Mortgage Association, Fannie Mae, 連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(Federal Home Loan Mortgage Corporation, Freddie Mac, 連邦住宅貸付抵当公社)の民営化の話が大きな話題となっているが、今後の政策判断次第で、アメリカの住宅市場の構造が大きく変わる可能性がある。


報道によれば、トランプ政権が、新規株式公開(IPO)を年内に実施し、保有株を放出する準備を進めている。これが実現すれば史上最大級の株式公開となる可能性が高く、2社の企業価値を約5,000億ドル(約73兆8500億円)以上と評価するIPOで、5%から15%の保有株を放出し、約300億ドルの調達を見込む計画となる可能性がある。投資銀行にとっては収益チャンスだ。


そもそもファニーメイとフレディマックって何だろう?


ファニーメイ(Fannie Mae)とフレディマック(Freddie Mac)は、アメリカの住宅ローン市場の安定と流動性を支えるために設立された政府支援法人(GSE:Government Sponsored Enterprises)。


ファニーメイとフレディマックは、1) 銀行や金融機関が貸出した住宅ローンを買取り、貸し手に資金を供給、2) 買取った住宅ローンをまとめて住宅ローン担保証券(MBS, Mortgage-Backed Securities:住宅ローン担保証券)として証券化。


この言い方が正しいかどうかはわからないが、市場の流動性を高めることにより、貸し手の資金調達を多様化、国民の住宅取得を促進している。アメリカの住宅市場の発展に大きく貢献してきた機関だと私は思っている。


アメリカのMBSは、住宅ローンを裏付けにして発行される証券で、投資家に元本と利息が支払われる金融商品だ。住宅の購入者が銀行などの金融機関から住宅ローンを借りる。金融機関は、そのローン債権をファニーメイやフレディマックなどに売却。ファニーメイやフレディマックは、複数の住宅ローンを束ねてMBSとして証券化。証券化されたMBSは投資家に販売され、投資家はローン返済に基づく利息と元本を受取る。


民営化の話は、マーケットへはどのような影響があるのだろう?


民営化で市場の仕組みが変わることでマーケットへ与える影響も少なくないかもしれない。


GSEであるファニーメイとフレディマックとは別にジニーメイ(Government National Mortgage Association, Ginnie Mae, 米国政府抵当金庫)という政府機関があり、ファニーメイとフレディマックと共にアメリカの住宅政策の中核を担っている。


ジニーメイの最大の特徴は、MBSの元利金の支払いに対する明示的な全額政府保証だろう。一方、ファニーメイとフレディマックが発行するMBSは投資家にとって安全資産と見なされているが、政府の明示的な保証はない。


今後、民営化により、この暗黙の保証がなくなると、投資家はリスクプレミアムを要求するようになり、結果として住宅ローン金利が上昇する可能性があるのかもしれないとの見方もあるが、さすがに政府の関与が一気になくなることもないものと思われる。政府管理を継続することで、金利の安定と市場の流動性を維持できると私は思っているが、期限前償還リスクがどのようにかわっていくかは今の段階ではよくわからない。GSEの役割縮小でMBS市場の流動性が低下してしまうとすれば、その影響は小さくないはずだ。


グローバルマーケットは、落ち着きを取り戻し株式市場は堅調だ。アメリカでは、雇用統計の悪化を受け、FRBによる利下げ期待が高まり、ヨーロッパでは、欧州中央銀行(ECB)は利下げを継続、グローバルに株式市場が高値を試しているが、アメリカ経済の先行きがいよいよ心配になってきた。


関税の影響が表れ始める中で、アメリカ経済のスタグフレーションのリスクが高まっているが、投資家があまり気にしている様子はない。早ければ9月にも米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを行うとの見方が広まっているが、インフレが抑制されていると決めつけるのは危険だ。


アメリカの企業は1qに輸入を急増したが、2qにはその反動で輸入が大きく減少した。3qの輸入がどうなるかは今の段階ではわからないが、大規模な関税が7日に発効したことで、輸入物価の上昇分が消費者や企業に転嫁されることになれば、インフレ圧力が強まる恐れがあり、FRBが利下げを躊躇せざるを得ない状況になる可能性もある。夏から秋にかけての経済指標がとても重要になるだろう。


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