篠原金融塾 続トランプ劇場~何故こんなことになっているのか?~ グローバルマーケットウィークリー 4/11/2025
- 篠原竜一
- 4月12日
- 読了時間: 5分
アメリカの製造業が大復活を遂げ、アメリカは大好況になるかもしれない。逆に大失敗に終わるかもしれない。大きな問題は、大失敗は比較的短期間で結果がわかるが、大成功を実感するには時間がかかるということだろう。
今週の株式市場は乱高下。相互関税の発表。相互関税の90日停止との噂、その後アメリカ政府が噂を否定、相互関税発動。中国・欧州による報復処置が発表されたと思ったら、アメリカは、報復処置を取らない国に相互関税の一部を90日停止。市場参加者にとっては、何が本当で何がフェイクニュースなのかわからず、不確実性がますます高まっている状況だ。今後アメリカと各国との交渉が始まるが、先行きの不透明感は拭えない。
何故こんなことになっているのか?
アメリカ政府は、COVID-19に対応するために約11兆ドルの財政政策を実施、連邦準備制度(FRB)は4.5兆ドル以上の国債、モーゲージ債を購入し、金融システムに巨大な流動性を供給してきた。この過剰流動性が景気を支え、企業経営は安定するとともに、インフレ率が大きく上昇することとなった。その結果、現在のアメリカの財政赤字は、約2兆ドル、GDPの約6%に相当する。
グローバリゼーションの中心的な役割を果たしてきたアメリカの貿易赤字は、約1兆ドル、GDPの約3%に相当する。アメリカの債務残高は約35兆億ドル、対GDP比で100%を超えている。所謂、双子の赤字は深刻だ。
大きな双子の赤字は持続可能ではなく、早急に対処する必要があるというのが、トランプ政権の基本的な考え方であり、異論はない。しかしながら、そのやり方が強引なので、グローバルマーケットが混乱している。
財政赤字の削減については、イーロン・マスク氏、貿易赤字の削減については、米大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長が中心となって政策を立案・実行している。
マスク氏は、政権の一員として財政赤字の削減を実現するためにリストラを実施しているが、ミラン氏の規制緩和や減税を通じて、アメリカ製造業の大復活と共に個人消費を押し上げるという長期的なゴールには同意しているものと思われるが、その前段としての保護主義には反対の立場をとる。
国民からの支持を得た政治家が、未来のアメリカの青写真を描き、それを政策として実行に移しているというのが、今アメリカで起きていることだ。トランプ劇場の主人公はアメリカで、アメリカに対する報復は絶対許さないと舞台の上で叫んでいる。
具体的には、アメリカは、関税政策で各国に揺さぶりをかけている。相互関税の一部を90日停止したことを受けて、マーケットは落ち着きを取り戻したと考えている向きも多いかもしれないが、アメリカは、貿易赤字を大きく削減、アメリカ製造業を大復活させるという目的を達成するために、非関税障壁の撤廃などを通じて、各国に対しアメリカ製品の輸入を促していくことになるだろう。今後の交渉の中で、アメリカが、アメリカ製品の国際競争力を高めるために、各通貨に対し、更なるドル安への誘導を求めるのか気になるところだ。
アメリカ経済は、短期的には、関税率の引き上げを受け、インフレ率は上昇すると考えるのが妥当であり、世界的な株式市場の混乱、景気減速など、マイナス面が顕在化する可能性が高い。
通常、アメリカの景気が減速する局面では、質への逃避の動きから、米国債が買われることが多いが、今回はインフレ率が上昇するとの見方から米国債も売られ、金利も大きく上昇した。株式市場のみならず米国債市場のボラティリティも上昇することになりそうだ。これだけわかりやすくスタグフレーションに備える米国債市場を見るのは初めてだ。
上述の通り、今後のポイントは、ドル安政策への大転換が実施されるか否かだろう。通貨政策はインフレ動向、アメリカへの投資、資本の流れに大きな影響を与えるはずである。一つだけ確かなことは、グローバルに不確実性を大きく高まっており、アメリカが相互関税の一部を90日停止したからといって、これらの問題が早急に解決されると考えるのはあまりにも楽観的過ぎるだろう。
こんな時に相場の先行きを考えるための日本株のチャート分析などには意味がないと私は思う。結果説明としては、チャート分析は役に立つだろうが、チャートに基づき、買い場がそろそろくるとか、まだまだ売られるとかいう情報には気をつけたほうが良い。今のマーケットのリスクは、まさに政治リスクだ。政治リスクにチャレンジして、仮に収益が上がったとしても、それはラッキーなだけだ。アメリカ株が買われれば日本株も買われるだろうし、逆に売られれば日本株も連れ安になるだけだと思う。
これからのマーケットがどうなるかと聞かれても、当面グローバルマーケットは大混乱、ボラタイルな展開が続くとしか言いようがない。トランプ劇場の公演が大成功に終わるのか大失敗に終わるかがわかるには最短でも数か月、最長で4年かかる。その間のグローバルマーケットのボラティリティは、今までの平均値をはるかに上回るものになるだろう。大きな問題は、大失敗は比較的短期間で結果がわかるが、大成功を実感するには時間がかかるということだろう。

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