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執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 チェスvsポーカー グローバルマーケットウィークリー 3/4/2022

パウエルFRB議長は2日の議会証言で、「3月15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げを開始し、年内さらに数回の利上げを行うという計画に沿って慎重に進んでいくつもりだ」と述べた。4日に発表された2月のアメリカの雇用統計では、就業者数が前月比67万8000人増加した。失業率は3.8%に低下し、平均時給は前年同月比では5.1%上昇しており、ウクライナ情勢に関係なく、アメリカのファンダメンタルズに基づき、いよいよFRBによる利上げが実施される。


ロシア国防相は住民が避難する為に一時停戦を発表しているが、グローバルマーケットは、来週もウクライナ情勢に右往左往する展開が予想される。


そもそもロシア対ウクライナの戦争が勃発したというよりは、一方的なロシアによる軍事侵攻に対し、必死にウクライナが防衛しているという状況だが、これが米国をリーダーとする西側諸国とロシアとの間の冷戦の始まりかもしれないという識者が多い。日本とドイツは第二次世界大戦で敗戦国となったが、国は滅びなかった。しかしながら、冷戦の敗者が壊滅的なダメージを負うということはロシアのプーチン大統領ほど理解している人はいないだろう。従って、プーチン大統領にとっては、絶対に負けられない戦いだということを我々は理解するべきだろう。ウクライナで最大、欧州でも最大級の原発をロシア軍が制圧したという報道が流れている。第3次世界大戦になるリスクも完全には排除できない。ウクライナを飛び越えて、米国、NATO(北大西洋条約機構)とロシアが直接対立することになるととても危険だ。プーチン大統領は、新たな勢力圏を作ろうとしているのだとすれば、実現するためには何でもやると考えた方が良いのかもしれない。


ユーラシア・グループのブレマー氏は、プーチン大統領は、「チェスプレーヤーではない。ポーカープレーヤーだ」と言っている。


ブレマー氏の言うことが正しいとすれば非常に恐ろしい。プーチン大統領自身が次のカードが何かを知らないということだ。終わりが見えない。残念ながらウクライナ政府関係者がロシア軍に捕まるか、もしくは西側諸国へ避難するまでロシアによる攻撃は続くだろう。それまでの間に多くのウクライナ人が命を落とすことになる。だからと言ってウクライナとしてはロシアの要求を全面的に受けいれることは難しい。


そんな中北京2022パラリンピックが開催されている。複雑だ。平和の祭典が開催されている時に世界中を巻き込むような戦争が同時に行われているなんて信じられない。こんな時に金融市場への投資など考えるべきではない。今週は原油、金、そして国債が買われ、株が売られた。仮に来週ウクライナ情勢が落ち着けば、逆の動きになる。ロシア軍が原発制圧なら株は売られるが、原発で火事が起きただけであれば株は買われる。戦争がどんな展開になるか予想できる市場参加者などいない。ましてや日本で報道を聞いただけでは何も判断することは出来ない。ロシア軍の戦死者も9,000人なのか500人なのか我々には本当のところはわからない。何より命がけで戦っている人がいる時に市場参加者が出来ることはリスクを縮小することだけだ。





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