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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 米財政拡張、支える世界 金利求め国債大量購入(日経新聞朝刊1/19/2020)

1/19の日経朝刊の一面の記事「米財政拡張、支える世界 金利求め国債大量購入」は興味深い内容だ。


「米政府の財政拡張が止まらない。財政赤字額は年1兆ドル(約110兆円)を超え、先進国全体の8割を占めるようになった。債務残高は国内総生産(GDP)の約100%と第2次世界大戦の直後以来の水準となり、利払いは年43兆円に膨らんだ。ところが、米国債をいくら増発しても、金利に飢えた世界の投資家が買う。20日に就任3年を迎えるトランプ大統領の大盤振る舞いを世界が支える構図だが、ドル安などをきっかけにした逆回転のリスクも強まる。」


共和党政権下であるにもかかわらず、トランプ政権が行っている政策は大きな政府だ。世界経済は米国に支えられている。


また、ユーラシア・グループも2020年の10大リスクのひとつにも挙げているが、今年の大きなテーマは引き続き米中関係だ。ユーラシア・グループは、米中関係について、「貿易戦争は休戦状態にあるものの、事態打開の可能性は低い。米国は中国企業への出資規制の取り組みや制裁、技術管理など中国に強硬な措置を講じる見込み。これに対し中国は企業を「信頼できない組織のリスト」に加えることで報復するだろう。トランプ大統領が再選に集中する中で、習近平国家主席は同大統領が香港と台湾問題でどれだけ押し返してくるか試し、予想外の反発を招く恐れがある。」と説明している。


中国は減速してきているとはいうものの引き続き6%で成長している国だ。世界経済は米中関係抜きには語れない。


日米欧の中央銀行は引き続き超低金利政策を継続している。日経新聞で指摘されているように「日本やドイツ、フランスの国債は今や、0%程度やマイナス金利に沈んでいる。米国債は1%以上の金利が残り、マネーが集まりやすい。」という状況は今年も続く。


トランプ大統領の就任後、財政赤字は急増している。リーマンショック直後の09年に次ぐ水準であり、財政リスクは高まっているとしか言いようがない。財政的にはイランと戦争を行っている場合ではない。


記事は、「インフレ率の高まりなどで低金利の前提が崩れれば、ドルと米国債の売りが連鎖して進む懸念も出てくる。大量に買った世界の投資家も米国債の下落で損失を抱える。「もたれ合い」の構図は、世界経済に打撃を与えるリスクをはらむ。」と締めくくっているが、現在そう考える投資家は少ない。イランとの戦争が回避され、米中が、貿易交渉を巡る「第1段階」の合意に署名したことで市場心理は好転し、米国株式主要3指数がそろって終値ベースで過去最高値を更新している。


これらを支えているのがトランプ大統領による財政政策とFRBによる金融政策だ。


米国は基軸通貨国。日本は、債務は円建てで、日本銀行と日本の投資家がその太宗を保有している。従って、短期的には日米ともに財政問題をきっかけに大きな混乱があるとは思えない。低金利が続く中、イールドを求める投資家の資金が米国には流れてくる。過剰流動性が流れ込み、結果として金融市場は歪んでいる。しかしながら、この歪みの解消が始まるのがいつかは誰にもわからない。


何か大変なことがすぐに起こるわけではないと思うものの、本当にこれで良いのか?


「何か気になるけど、まあ大丈夫だろう」というリーマンショック前の状況と似てきているような気が。。。慎重にしていれば良いという話ではないが、米中問題、台湾・香港問題、中東情勢、カシミール問題、中南米情勢、欧州情勢など政治リスク・政治リスク問題だらけの2020年。世界中の政策当局者が金融危機については何としても回避するから大丈夫と言うのは少し楽観的過ぎるのでは?


資金が流れている限り問題はないのでしょうが、例えば日本の不動産市場では、土地の価格が大きく上昇するとともに、人件費を中心に建設コストが大きく上昇しているのは気になるところ。


これからの日本は、人口減少×少子高齢化×地震リスク×自然災害リスクを抱えている。そして人口減少による急速な需要減がやってくる。現在の供給を維持するためにはインバウンド需要を含む外需に頼るほか方法はない。外国人労働者は、低賃金労働者と言うイメージがあるが、今後の東南アジア諸国の更なる成長に伴い、日本で働くことの魅力が相対的に減ってくるのも時間の問題だ。


いづれにせよ、米国の状況を今まで以上に注視すべき年になりそうだ。

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