暇なときに 新卒で入社した会社で働き続けるのが今でも主流

日経新聞(8/4)の働き方innovationの記事を「伸び続ける勤続年数 日本型雇用、コロナで転機」を読んで気になったことがある。

キャリアコンサルタントの勉強会でも、これからは、日本でも終身雇用を前提としたメンバーシップ型の働き方から、専門性を培うジョブ型の働き方に変わっていくという話を繰り返し聞いてきた。日経新聞の特集などでも「広がるジョブ型採用」という記事を良く眼にするようになってきた。この記事も同様の記事だ。


しかしながら、「厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、一般労働者の平均勤続年数は平成以降も伸びている。転職が増えたとはいえ、新卒で入社した会社で働き続けるのが今でも主流だ。」とのことだ。


今まで聞いてきた話と違う。結局、日本の人事制度は大きくは変わっていない。

戦後日本の教育は、リーダーを育てることを目標には掲げなかった。生徒は、先生から与えられた問題の正解を求める訓練を受け、一流大学に入学することが、一流企業に就職するための登竜門になっていった。日本の企業は大学名は重要だが、成績はさほど重要視しなかったので、学生は大学では勉強することよりも様々な経験を積むことを優先してきた。経済が成長し、会社は増収増益、労働者の生活水準が年齢とともに向上していくメンバーシップ型の働き方には、そうして育った人材はフィットした。

新卒で正社員として入社した会社で楽しく働き、幸せな人生を送れるのであれば、何の問題もない。戦後の急速な発展を支えたこの人事制度は世界からも注目されるようになった。新卒で入社した会社での平均勤続年数が伸びているのは悪いことではない。

しかしながら、平成の時代に入り、バブルが崩壊し、経済の成長が止まった。粗利が伸びなければ、会社はやりたくなくても、労働コストを削減する必要がある。正社員の解雇が非常に難しい日本では、ベースアップの廃止、役職定年の年齢の引き下げ、役職定年後の給与水準の更なる切り下げ、新卒正社員の採用人数の削減、非正規社員の比率の引き上げ、などを検討せざるを得ない。労働コスト削減により生産性を維持することになるので、給与水準が上がるわけがない。そのような状況でも仕事を失う訳でもなく、従業員は仕方がないと自分に言い聞かせる。これでは正社員で働きながらもハッピーではない人が大量に存在することになる。

記事の中で気になったのが、「上司の指示の下で働くメンバーシップ型はテレワークに適さない」というところだ。これからはジョブ型に変わっていくということだろうが、今一つ理解できない。メンバーシップ型だろうがジョブ型だろうが、上司の指示の下で働くことに違いはないし、自分の属しているチームで協力しながら働くのではないだろうか? 私は日本の銀行で17年、アメリカの銀行で8年、フランスの銀行で5年働いたが、テレワークに適さない仕事はメンバーシップ型だろうが、ジョブ型だろうが一緒だと思う。


成功は自分の手柄、失敗は上司の責任。今も昔も変わらない。最近の若い奴はと言って飲んでいるおじさんたちは、気がつけば上司の悪口をつまみに酒を飲んでいる。こんなつまらない飲み会に参加する若者は少ない。特にジョブ型ではそうだが、本来は成功も失敗も自分の責任だ。

ジョブ型では、職務が変わらなければ給与水準も大きくは変わらない。年功序列ではない。ジョブ型とはいっても自分一人で与えられた職務を全うするわけではない。自分が成功するようにチームのメンバーを巻き込む力が必要になるし、自分が助けてもらうためには、チームメンバーへのサポートも積極的に行う必要がある。チームのパフォーマンスに責任を持つマネジメントになれば、自ずと給与水準は上がる。一方、職務が自分にフィットしていて、処遇に不満がない従業員の中には、負荷がかかるので、マネジメントになりたくないという人もいる。人にはそれぞれ個性がある。ジョブ型では苦手なことがあっても良い。ジョブ・アサイメントを理解し、それに必要な能力を備えていれば良い。苦手なことは誰かに助けてもらえばよいのだ。全ての科目で平均点を上回る人より、大好きな科目を極めるような人が評価されるのが、ジョブ型の働き方だ。

日経の記事ではジョブ型でも解雇と無縁というドイツ流が取り上げられているが、労働コストのコントロールの仕方が賃下げしかないことと同義であり、フレキシビリティに欠けると私は思う。一定のルールに基づいた解雇のルールは会社のみならず、労働者にとっても悪い話ばかりではない。そもそも成果を上げ、評価されている労働者が解雇されることは殆どない。専門的なスキルがあれば、1つの会社にこだわるより、自分のキャリアアップにつながる会社への前向きな転職を考える人も増えるだろう。

それでも、日本では、年功序列・終身雇用の下で正社員として定年まで働くというメンバーシップ型の働き方がこれからも大きく変わらないとすれば、日本の企業・労働者ともに苦戦するに違いない。正社員として入社した会社で多くの労働者が65歳、70歳まで働くことになる。正社員の空きがでてこなければ、労働市場のセカンダリー市場は拡大しない。ヒトをモノに例えるのはあまりよくないかもしれないが、メルカリの登場で中古品のセカンダリーマーケットが充実した。労働者に例えれば、人員余剰の会社と人員不足の会社のマッチングだ。これからの日本にはとても重要なセカンダリーマーケットだ。

ひとつの会社の文化、価値観の中で自分を高めていくという働き方は素晴らしい。同時に、今後はひとつの会社にこだわるより、自分を高く評価してくれる会社への前向きな転職に挑戦するという選択の機会が増えていくことが望ましい。能力のある人を中途で採用する会社が増えれば、日本の生産性向上に貢献することは間違いない。

繰り返しになるが、「上司の指示の下で働くメンバーシップ型はテレワークに適さない」という意味がやはり理解できない。部下をどうマネージするかという問題であり、メンバーシップ型とジョブ型のどちらが良いかという問題ではない。チームとしての目標、個人の目標を掲げ、それを達成するために、個人の役割・責任を明確にし、仕事に取り組むマネジメントが少ないということだ。こんな一番大切なことが出来ないマネジメントしかいない会社では、働き方をどう変えようが従業員のやりがいは上がらず、人事制度を変えたとしても、結果は大きくは変わらないだろう。本当に多くの日本の会社がメンバーシップ型の人事制度だからテレワークは難しいと言っているのだとしたら、それこそが大問題であり、ジョブ型に変更したとしても「やはりジョブ型はテレワークに適さない」というコメントが出てくるだろう。

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