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篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 6/24/2022

米連邦準備制度理事会(FRB)のエコノミストのマイケル・カイリー氏がアメリカのリセッション入りの確率について様々なモデル分析を行っている。



イールドカーブとクレジットスプレッドを用いたモデル

リセッションリスクの分析には、クレジットスプレッド(Baa社債利回りと10年物国債利回りの差)やタームスプレッド(10年物国債利回りとFFO/N金利の差)といった金融変数がよく使われる。これらの変数は、経済活動や景気後退の確率を予測するために使用されているが、この手法で2022年3月末時点に示唆される今後1年間の失業率の大幅上昇確率は5%程度と低い。


先行指標を用いたモデル

経済学者が特定した先行指標を考慮するモデルはどうか?消費者信頼感、景況感、生産・労働市場指標、金融変数(タームスプレッドを含む)を使ったこの推定モデルによる今後1年間のリセッションの確率は、2022年3月時点では約5%とかなり低い。


インフレ率と失業率を用いたモデル

2022年3月時点で、インフレ率は数十年に一度の高水準、失業率は数十年に一度の低水準に近い水準にある。インフレ率と失業率の水準が、金融変数と連動して、失業率の大幅な上昇を予測するモデルだ。今回は、CPIインフレ率(4四半期変化率で測定)、失業率、クレジットスプレッド、タームスプレッドの4つの変数からなるモデルを検討している。このアプローチでは、今後1年間で失業率が大幅に上昇するリスクが大きい(50%以上)ことが示唆されている。歴史的に見ると、インフレ率の上昇と失業率の低下は景気後退に先行しており、このような状況は不均衡(製品市場と労働市場の過熱)を示唆し、景気縮小を通じてそれが解消される可能性があるという考えと一致している。また、タームスプレッドに加え、失業率とインフレ率を含めた予測モデルでは、1年または2年先のリセッションを予測する上でタームスプレッドの役割が大幅に低下することにカイリー氏がコメントしていることはとても興味深い。


カイリー氏のこのレポートを読んでいるのは我々だけではない。当たり前のことだが、パウエル米FRB議長はカイリー氏の上司だ。タームスプレッドは近い将来のリセッションリスクをあまり示唆しないが、低い失業率と高いインフレ率は今後1、2年の景気後退のリスクの高さを示唆している。金融変数、先行指標、その他のマクロ経済変数が、リセッションリスクに関して異なるシグナルを示すという報告を受けているのだ。とても判断が難しいだろうが、この報告を受ければ、インフレ退治がFRBにとって優先課題であると判断するのは当然だ。


このリサーチの一番の問題は、カイリー氏自身がコメントしているように、失業率が大きく上昇した7つの期間の例しか含まれていないということだろう。このような限られた歴史的経験での計量分析は難しい。パウエル議長が言う通り、不確定要因が多すぎて今後のアメリカ経済がどのような展開になるかを予測することが難しい。マーケットは右往左往する展開が継続するだろう。


先週のマーケットでは「アメリカのリセッション懸念が高まっており、、、」という説明が多かったが、本当にリセッション懸念が高まっているのだとすれば、株式市場は下値を試すだろう。先週は、グローバルに国債金利が低下したことにより、グローバルに株式市場は一旦落ち着きを取り戻したと考えた方が良い。


7月は米欧共に政策金利が上がることは確実だ。一方日銀は動かない。これだけ金融政策の方向性が異なることはめずらしい。アメリカでは既に夏休みが始まっているが、今年の夏のアメリカの景気、物価がどうなるのかがグローバルマーケットの最大の関心事になりそうだ。



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