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篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 5/7/2021

金融政策(民間投資と貯蓄をコントロール)と財政政策(財政支出と税金をコントロール)のどちらが景気を押し上げるのに効果的なのでしょうか?


古典派、新古典派、ケインズ経済学、マネタリズム、最近ではMMT。マネタリズムを唱える経済学者は通貨供給量をコントロールする金融政策を重視する。一方ケインジアンは、財政政策によって有効需要を創造することが必要だと主張する。天才たちが築き上げた理論なのでどの理論も正しいのでしょう。ただ、その時の経済状況によって、その効果が大きく変わってくることは事実でしょう。


新型コロナ感染拡大と各国の対応から考えると、通常時には金融政策、緊急時には財政政策が効果的なことが明らかになってきているのではないでしょうか?


アメリカの感染拡大防止策は決して上手くいったとは言えないでしょう。日本の防止策の方が明らかに機能した。しかしながら、アメリカでは、失業保険給付を大幅に増やし、国内でワクチンを開発、財源をどうするかという課題はあるものの、大々的に景気対策を実施している。ワクチン接種は急速に進み。承認されるかどうかはわからないが、近い将来、ニューヨークのタイムズスクエアでは観光客でもワクチン接種が可能になるかもしれない。そして、アメリカは6%を超える経済成長が2021年に実現しそうだ。


労働市場が専門のイエレン財務長官は、労働市場の回復にも自信を持っている。イエレン財務長官は、「(バイデン政権の)追加支出は経済規模に比べれば小さいとはいえ、経済が過熱するのを防ぐには、金利をいくらか引き上げる必要が出てくるかもしれない」と発言している。


注目された4月の雇用統計では、非農業部門就業者数(季節調整済み)は前月比26万6000人増で、市場予想の約100万人増を大幅に下回った。失業率は前月の6.0%から6.1%に上昇した。しかしながら、中身を見ると、レストランなどが雇用を増やしている一方、コロナ流行が追い風となっていたスーパーマーケットなどの食料品店、宅配業者の雇用、人材派遣サービスが減っている。緊急時の経済が徐々に落ち着きを取り戻しているともとれる内容と市場参加者は感じているのかもしれない。発表直後は米国債とナスダックが買われ、ダウが売られる展開となったが、結局米株は買われ、米国債はカーブがスティープニングしての越週となった。


今後アメリカ経済が順調に回復していくとすれば、バイデン政権にとっての課題は、増税による財源の確保でしょう。しかしながら、おそらく先に実施されるのは金融政策の正常化でしょう。明らかにやりすぎだからだ。FRBがバランスシートの縮小、もしくは利上げを実施する時には、過剰流動性により支えられている市場が壊れる可能性が出てくる。中央銀行にとって政策変更は簡単なことではないが、アメリカでは出口戦略の議論がいよいよ始まった。そろそろ市場が壊れた時に利益が生まれるポジションを仕込んでいる投資家がでてきても不思議ではない。


一方、日本はどうだろうか?日本の新型コロナ感染拡大防止策は他国と比較すると上手くいっているとは言えない状況になってきている。緊急事態宣言が解除できない。日本の金融市場の先行きは心配だ。アメリカの景気回復、堅調な株式市場に浮かれすぎだと正直感じてしまう。その上、日本ではオリンピックという一大イベントが控えている。本来はアスリート・国民全体が誇りを感じ、笑顔になる待ちに待ったイベントだが、完全な形での開催は正直難しい。開催するにしても、中止するにしても一大事だ。


確かに日本の財政赤字問題は深刻であるものの、プライマリーバランスの黒字化を目指すべきなのは通常時であって、緊急事態宣言が発出されている今ではない。不安な状況がこれからも続けば、引き続き個人は消費を、企業は投資を控える。緊急時に金融政策で個人消費、企業の新規投資を押し上げることは難しい。金融政策で過剰流動性を維持、拡大したとしても、それは金融資産を支えるだけでしょう。実体経済への波及効果は小さい。


日本では、ワクチンの効果が副作用を上回るという声が強くなってきたが、当初その副作用を心配する声が圧倒的に多かった。結果としてワクチンの承認が進まずに、接種開始が遅れた。日本の技術力があれば、国産ワクチンの開発、製造は可能なはずだ。国産のワクチンが開発され、ワクチン接種が大きく進展すれば流れは大きく変わるはずだが、何とも残念なのはオリンピックには間に合わないということだ。それまでの間、日本経済を支えるために出来ることは、財政政策を強化することだ。






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