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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 原油関連ETFが大人気?

投資は自己責任だ。自由だ。買いたい人は買えばよい。売りたい人は売ればよい。50%の確率で儲かる。50%の確率で損をする。

個人投資家が、原油先物価格の反転を見越して、原油関連のETFを買っているそうだ。儲かるか、損するかは50/50だ。

アメリカ頼みだった世界経済はアメリカの感染拡大で既に大不況だ。もしかしたら、世界大恐慌に陥るかもしれない状況だ。原油は需要減を受け、保管する場所がないほど在庫が積みあがっている。確かに原油先物などのデリバティブよりは、投資先としては、ETF、個別株のほうが良いのかもしれないが、何故個人投資家がそんなリスクをとる必要があるのか?

私は買えとも売れとも言っていない。こんなに先行不透明感が高まっている状況では、引き続き個人投資家のやるべきことはリスクを縮小することだと思う。こういうボラタイルなマーケットでは、買われても売られても値幅は大きい。

信じられないくらい売られているものを探して買う。信じられないくらい買われているものを探して売る。私がいつも考えていることだ。市場には、莫大なデータを分析し、割安・割高分析を行い。それに基づき、取引を行っている人達がいる。リラティブバリュートレードだ。

Long-Term Capital Market (LTCM)というヘッジファンドは、このリラティブバリュートレードで一世を風靡した。LTCMは、ソロモン・ブラザーズの副会長まで務めたジョン・メリウェザー氏により1994年にコネチカット州グリニッジに設立されたヘッジファンドだ。同じ建物には、グリニッジ・キャピタルというプライマリー・ディーラーのオフィスも入っていた。グリニッジは全米でも有数の高級住宅地で、オフィスは川沿いにあり、ボートで出勤するトレーダー・セールスたちを見て驚いたことがある。ランチミーティングがボートで行われることもあった。

LTCMは、マイロン・ショールズ氏とロバート・マートン氏という2人のノーベル経済学賞学者を擁し、高度な数学および理論経済学的テクニックを駆使して1995年には43%、1996年には41%という驚異的な運用成績を上げた。今でこそオプション価格を決定するのは原資産価格、期間、行使価格、金利、ボラティリティの5つだと言っても誰も驚かないし、市場参加者でブラック–ショールズ方程式を知らない人はいない。この2人がブラック–ショールズ方程式でノーベル経済学賞を受賞したのは1997年のことだ。しかしながら、その翌年の1998年10月にLTCMは破綻した。1998年に何があったのか?

1997年のアジア通貨危機、並びに1998年のロシア財政危機を受け、新興国の債券・株式が下落した。LTCMは、新興国の債券・株式は明らかに売られすぎとの見方から買い向かったが、売りは止まらず、結局破綻した。

ジョン・メリウェザー氏には何度もお目にかかったが、債券の世界ではスーパースターで、話を聞いているととても魅力のある人だ。加えて、LTCMは、ノーベル経済学賞学者が2人もいたのに破綻したのだ。これには驚いたというか信じられなかった。


オプション価格理論を構築し、ノーベル賞を受賞した人たちがボラティリティの上昇に負けたのである。当時私はニューヨークにいたが、マーケットは混乱の極みだった。ある日から3日間連続で米国債が3ポイント、トータル9ポイント売られた。3日間連続で値幅制限にひっかかり、取引停止になった。東京・ロンドンから電話がかかってくる。「どうした。何が起きてる。大丈夫か」


とにかく資金繰りを盤石にし、リスクを縮小するしかなかった。この時の教訓は、先行不透明感が高まるような出来事が起きた時は、リスクを縮小しておかないと自分達が思ってもいないような展開となった時に身動きがとれなくなってしまうということだ。

だから、新型コロナとの闘いが続いている今は、プロですらリスクを縮小しているのだ。個人投資家が少しぐらい投資機会を逃しても失うものは大きくないと私は思う。

クレジットマーケットは中央銀行による必死のサポートで更なる混乱を防ぐことが出来るかもしれない。同時に防げない可能性もあるということを理解しておいた方が良い。

そうは言っても、投資は自己責任だ。自由だ。買いたい人は買えばよい。売りたい人は売ればよい。50%の確率で儲かる。50%の確率で損をする。

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