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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 メガバンクによる有価証券投資って面白い!その2

その1では、「メガバンクでも日本国債・米国債・独国債、そして、米国モーゲージ債という金利商品のトレーディングの仕方が全く異なる。大きくトレンドがでるマーケットではALMが優位だし、ボラティリティが高まり、乱高下するような相場の場合には、キャピタルゲインを狙うオペレーションに軍配が上がる。」という話までした。


アメリカのメガバンクであるBank of Americaの有価証券投資はどうなっているのだろう?その他有価証券(Available for sales)で保有する有価証券残高は約27兆円であり、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの有価証券投資残高と略同じだ。

その投資の中心は米国モーゲージ債だ。Bank of Americaは既に1-3月期の決算を公表しているが、とても興味深いのは、この1-3月にAgency MBSの残高を大きく縮小していることだ。

確かに大きく金利が低下する局面ではモーゲージの早期償還が増えるため、モーゲージ債の利回りは米国債ほど低下しない。米国債とのスプレッドは拡大する。しかしながら、米国債金利が低下している限りは、モーゲージ債投資で大きく損することもない。

にもかかわらず、Bank of Americaがモーゲージ債残高を減らしているのは、日本のメガバンクでグローバルマーケット部門に携わる人には気になる情報だろう。

今後は、AIが市場を分析し、AIが投資先選別し、AIが取引を執行するようになるだろう。そうは言っても、ただ座っているだけでは面白くない。


マーケットを見る時にとても重要なことは、ファンダメンタルズだ。ファンダメンタルズの分析抜きに相場を語ることは難しい。そして中央銀行による金融政策だ。もうひとつ大切なことが、需給だ。2つの意味がある。財政赤字の状況により、国債入札の額が大きく変わる。この需給。もうひとつは、投資家がどのマーケットにキャピタルをアロケートしてくるかという意味での需給だ。世界中の銀行が、生命保険会社が、ヘッジファンドが、アセットマネジメントが、年金が、何を考えているのか?とても重要だ。


繰り返しになるが、こういう分析全てをAIがやってくれる時代が来る。銀行のマーケット部門で働く人の仕事内容も当然変わっていくだろう。それでも世界の政治・経済の動きをリアルタイムに感じることが出来るマーケット部門で運用業務に携わる仕事って面白いと私は思う!

それにしても、使っているバランスシートが1/3であるにもかかわらず、Bank of Americaの純利益が3グループの合計を上回るのはとても気になる。


また、Bank of Americaの従業員数は約20万人とメガバンク合計の従業員数(約28万人)より少ない。ということは、日本のメガバンクの完敗だ。


何が違うのだろう?日米のメガバンクが行っている業務に大きな差はないにもかかわらず、これだけの収益の差はどこから来るのだろうか?

とは言っても日本のメガバンク合計の純利益は、約1兆7千億円。トヨタ自動車は一社で約2兆円の純利益を叩き出すので、それと比較すると見劣りはするものの、引き続き凄い利益だ。

伝統的な資金決済、資金仲介、そして信用創造を遅滞なく行う銀行の役割は引き続きとても重要だ。こういった伝統的なバンキング業務は、銀行員が最も得意な仕事だろうが、実はAIも得意だ。銀行の経営者にとって、AI導入に伴う人員削減はとても頭の痛い問題だろう。それでも、既存のビジネスモデルから脱却できない銀行、銀行員は淘汰される。銀行のトレーディングフロアにAI エンジニアがいないようでは話にならない時代が既に来ている。

でもそれってよく考えると銀行、銀行員だけの問題ではない。こういう話は、全産業に当てはまる話だ。特に少子高齢化の日本、日本人は、ポストコロナの時代を想像力豊かに前向きにチャレンジしないといけないのだと思う。大変だと思って変化を拒むか、面白いと思って変化にチャレンジするかは人それぞれだ。(おわり)


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