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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 年初来のグローバルマーケットを振り返る

凄いマーケットとなった。


まずは、株式市場だ。新型コロナウイルス感染拡大を受け、グローバルに大幅下落となった。積極的な金融政策、財政政策にもかかわらず、先行き不透明感を払拭することが出来ず、市場のボラティリティーが急上昇した。

次に、国債市場を見てみる。新型コロナウイルスの感染拡大、それを受けてのFRBによる金融緩和を受け、米国債が大きく買われた。欧州債はイールドカーブがフラットニングしたが、各国によってその値動きは異なるものとなった。ドイツ国債はブルフラットニング(買われながら、イールドカーブが平坦化)。フランス国債は大きくレベルは変わらなかったもののイールドカーブはフラットニング。イタリア国債は短期物が大きく売られる形でのベアフラットニング(売られながら、イールドカーブが平坦化)。日本国債は略変わらず。

為替は乱高下したものの終わってみれば若干の円高。原油価格が大幅に下落、金価格は上昇。

新型コロナウイルスは、最初は中国の問題だった。モノの流れが止まり、中国経済の先行きは暗いという論調。それが日本を含むアジアの問題へと拡大。そして、欧州、アメリカへ拡大した。今や各国ともヒトからヒトへの感染拡大防止に追われている。

感染防止策とは何だろうか?

ヒトからヒトへの感染を防ぐためには、薬がない以上、感染者と非感染者の接触を防ぐことだ。しかしながら、このウイルスが厄介なのは、無症状・軽症の感染者が多く存在することだ。誰が感染者で誰が非感染者なのかわからないことだ。ということはヒトの流れを一定期間止めて、ヒトとヒトの接触を断つことが必要となる。

現実的ではないかもしれないが、企業・学校を一定期間休みにして、個人の外出を禁止する。そして出入国を禁止する。

これにより、2-3週間で感染者と非感染者を区分することが出来る。その上で、感染者を監視することが出来れば、感染拡大は制御できるのではないか?

学校の新学期をいつから始めるかという議論が始まっているが、授業はリモートで行うべきだろう。生徒5人に1台しかパソコンが用意できていない状況では難しいのかもしれないが、そんなことを言っている場合ではない。

それでは一体人工的にヒトの流れを止めた場合経済的には何が起こるのだろうか?

社会全体の経済状態に活気がないことを不景気と呼ぶ。モノの流れが止まりつつある中、人工的にヒトの流れを止めることで感染症の拡大を防ぎ、その結果、社会全体の経済状態を活気がない状況にすること、すなわち不景気にすることが最大の感染拡大防止策だ。

従って景気が悪くなるのは防ぎようがない。社会不安が起きないように、政策当局者は、金融政策・財政政策を実施する。しかしながら、ヒトの流れを作り出すような政策を行うことが出来ないのは初めてだろう。30年以上グローバルマーケットを追いかけてきたが、4-6月期は、この30年で誰も経験したことのないような予想することが難しいマーケットになるだろう。

中央銀行が出来ることは市場の流動性が枯渇しないように資金を供給することだが、景気を押し上げることは難しい。休業補償など財政政策には一定の効果は期待できるが、ヒトの流れが止まっている限り、景気を回復させることは難しい。そして、混乱が落ち着いた後には債務とジャブジャブの過剰流動性が残る。大きな問題は、感染症はヒトを攻撃するが、モノを破壊するわけではないので、復興需要がないことだ。

日本では日韓関係の悪化からインバンド需要が減速していた中、新型コロナウイルスの感染拡大で中国人観光客が街から消えた。今や世界の人口の約4割が自宅待機だ。

日本は今や人口減少国だ。需要・供給を考えた場合、国内需要は自然に減少していく。現在の供給を維持、発展させていくには、輸出を伸ばすか、インバンド需要を取り込むしかない。インバウンド需要をいかに伸ばすかは、引き続き国を挙げて行うべき重要な施策だ。顧客が外国人になる以上、ますますグローバル化に取り組まないといけない状況だ。斯かる状況下、新型コロナウイルス感染拡大は日本にとって緊急事態だ。

何度も申し上げているが、2019年10-12月期の段階で既にマイナス成長となっていた日本のリセッション入りを防ぐことは出来ない。アメリカ頼みだった世界経済は急速に縮小を始めている。識者の中にはインバウンド需要に頼りすぎだったという人も多いだろう。しかしながら、人口減少していく国が発展していくためには、移民を大々的に受け入れるか、インバウンド需要も含め海外向けビジネスを展開していくしかない。

当面グローバルにキャッシュ比率を高めた慎重な投資を行わざるを得ない展開が続きそうだ。低金利環境は継続するだろう。株式市場はボラタイルな展開が続く。引き続き下値リスクの方が大きいだろう。

リーマンショック時にはモーゲージマーケットが壊れた。今回市場参加者はクレジットマーケットに注目すべきだ。良いクレジットには資金が集まるが、一定の格付け以下のクレジットからは一斉に資金を引き揚げる動きが強まるだろう。過剰流動性が一番流れ込んでいたプロダクトだけに心配だ。

何度でも言う。個人投資家が出来ることはリスクの縮小だ。

様々な金融商品を分析して、売られすぎだ、絶好の買い場だという識者もいるでしょう。結果的に正しいかもしれません。しかしながら、想定外のことが起きている時に出来ることはリスクの縮小だと私は思う。

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