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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 大混乱のグローバルマーケット

米系大手投資銀行が揃ってまだ株式市場の調整は終わっていないと言っている。彼ら自身は、そろそろ株が売られても大丈夫なポジションになってきているのかもしれない。


一昨日米株はFRBによる利下げ期待を背景に買われた。しかしながら、昨日FRBによるFF金利の誘導目標の50bp引き下げ(新しい誘導目標1.00-1.25%)が実際に実施されると、直後には米株は値を戻したが続かず、結局大きく下落してクローズした。


緊急利下げを好感して米株が買われてクローズしてほしかったと考える市場関係者は多いだろう。


これは深刻だ。金融政策当局からすると政策として出来ることを市場から催促される。後追いで対応していくことになると一昨日、昨日のマーケットのようにBuy on rumor, Sell on factになってしまう。


そもそも新型コロナウイルスへの対応に金融政策が有効なのだろうか?


でも今はそんなことを言っている状況ではない。何でもやる。アメリカが動いた。さすがFRBだ。アメリカの景気が壊れることになれば世界恐慌のリスクもでてくる。何とか頑張って欲しい。


しかしながら、グローバルマーケットは既に過剰流動性でジャブジャブだということが問題だ。たしかに金融資産は支えられるだろうが、実体経済に与える影響は小さい。問題は「民間企業の資金繰り」だ。


米系大手投資銀行が揃って本当の痛みはこれからと言っている。米株安が終わっていないということは日本株安も終わっていない。


株・クレジットのエクスポージャーを維持しながら、ヘッジとして米国債を買っている投資家は大変だ。米10年債が引き続き買われ、金利は1%を割れている。それでも、日本の機関投資家は米国債買い・金利スワップの固定を受け続けている。


このヘッジオペレーションはとても難しい。


最も難しいのは買った米国債を売って利喰うタイミングだ。株・クレジットポートフォリオヘッジのために米国債買っているので、株が売られ、クレジットスプレッドがワイドニングする局面では簡単に利喰うわけにはいかない。


ここからは、米国債を上で買わされないよう気をつけたいところだが、それもなかなか難しい。結局、米国債を上で買わされる。米国債が買われている限りヘッジは成功だが、結局上値で売るチャンスを逃し、市場が落ち着いたところで、下で売らされ、ヘッジをしたつもりの米国債で実現損が発生、株・クレジットの含み益を大幅に失うというのが最悪なシナリオだ。


それでも市場がどんなにボラタイルでも、市場リスクだけにフォーカス出来れば良いのだが、今回は本格的に取り組まないといけないことが新型ウイルスへの対応だけに大変だ。


既にBCPを発動している金融機関もあるだろう。何故なら、トレーディングフロアで感染者がでたら、トレーディングフロアをクローズするしかないからだ。東日本大震災の時は、香港・シンガポール・ロンドン・ニューヨークオフィスからのサポートで対応することができたが、今回はそれも難しい。出来ることは従業員を自宅・オフィス・いくつかのバックアップサイトなどに分散させることだ。


まさに911テロ、リーマンショックが一度にやってきたような状況だ。


日本のリセッションは避けられない。サプライチェーンが止まった。日韓関係の悪化から、そもそもインバウンド需要が低迷していたことに加え、今回の新型コロナウイルスによるアジアだけでなく欧米からのインバウンド需要低迷は、人口減少、少子高齢化が続く日本では致命的だ。このままではどんどん需要が無くなっていく。


繰り返しになるが、今足許で何よりも大切なことは金融資産を支えることではない。中小企業・インバウンド業界を中心に「資金繰り」倒産を防ぐためにジャブジャブにある過剰流動性を活用することだ。


銀行は債券などの金融資産を買っている場合ではない。マニュアル通りの対応しか出来ない銀行には無理だろうが、仮にマイナス金利だったとしても資金を必要とする中小企業・インバウンド業界に対する貸出が必要な時だろう。これこそが今の銀行に求められていると私は思う。

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