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これからのキャリア ~「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ~

「ビズリーチ」は、会員を対象に、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う、働き方やキャリア観・転職活動への影響に関するアンケート調査を実施した。調査したのは、2020年4月20日~2020年4月22日。有効回答数は、517。

https://www.bizreach.co.jp/pressroom/pressrelease/2020/0430.html?fbclid=IwAR2Q4FhSjXfJQM38oWF6TJLDghKRbN3VUoNQJAuPmbPUDc6kv5uO_YC922Y

株式会社ビズリーチ 取締役副社長 酒井 哲也氏は、今回のアンケートの結果を受け以下のようにコメントしている。

現在、前例のない不安定な状況が続いていますが、このような社会情勢が変化する時は、長期的な視点で自身のキャリアを振り返るきっかけになります。本アンケート結果でも、約6割の方にキャリア観の変化が生じており、そのうち9割以上が「企業に依存しないキャリア形成が必要」だと回答しました。どのような場所でも活躍できる市場価値の高い人材になるために、自身の強みを可視化し、スキルアップを目指す方が多い傾向が明らかとなりました。

こんな社会情勢下、従業員は、今後何故企業に依存しないキャリア形成が必要だと考えているのか?今後の働き方やキャリア観について、アンケートの回答者の代表的な意見をまとめると以下の通りだ。

今後、より雇用が流動的になり、日本の企業はこれまでのジェネラリストから、欧米のようなスペシャリストを重視した人材採用を段階的に増やしていく。そして、新型コロナウイルス感染症拡大は、ジョブ型への急速な移行が進むきっかけになり、よりプロフェッショナルな能力が求められる。

こういう時には個人事業主・中小企業経営者が一番苦しい。「サラリーマンで良かった。毎月決まったお給料がもらえるから。転職なんて考えないで、今の会社で頑張ろう。」という結果になるのかと思ったら全然違う。

この結果を見て、今一度日本の人事制度、賃金制度を考えてみようと思った。

典型的な日本の企業の人事制度は、年功序列、終身雇用を前提に職務や勤務地を限定せずに働く「メンバーシップ型」だ。解雇なしが原則の「メンバーシップ型」は突然の解雇リスクがない分、給与水準は解雇ありの欧米で主流の「ジョブ型」よりも低くなることが多い。今後この「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ急速に移行していくと考えている従業員が多いというのが今回のアンケートの結果だ。

先日日経新聞に掲載された記事によると、日本を代表する大企業のソニーは、「初任給」は横一線でスタートという平等原則を見直し、能力などで個別に給与を決める「ジョブ型」に近づけようという取組みを始めたそうだ。責任や役割に応じて報酬に差がついていく。採用に関しても人事部だけでなく、個々の事業部門が採否に関わるようになったという。

企業が、従業員に思う存分力を発揮してもらうために、各自の責任や役割を明確にし、その成果に応じた処遇をしていくという取組みを実施し始めた。それにより、より優秀な従業員を採用しようという取組みなのだろう。

私は大学を卒業後、邦銀に就職した。年功序列と終身雇用を前提に職務や勤務地を限定せずに働く「メンバーシップ型」だった。当時、定期昇給とかベースアップとか職能給とか職務給とかあまり意識したことはなかったが、某邦銀の労働組合は、全従業員の賃金水準を一律に底上げするベースアップ(ベア)について、2020年春闘では要求しない方針を固めたという報道があった。

定期昇給とベアのことについて考えてみよう。

日本では、賃上げの議論をする時には定期昇給とベアの話が出てくる。定期昇給とは、年齢や勤続年数に応じて賃金が昇給する制度のことだ。ベアとは、従業員全体の賃金水準・基本給を引き上げるものだ。

定期昇給は、年功序列、終身雇用制度が導入されている会社では、毎年定年退職する人と同じ数の従業員を採用し、新入社員~定年退職者の従業員数をきちんとコントロールしていくと人件費総額に与える影響は大きくはない。毎年50人退職して、50人新卒の採用をしている限り、人件費総額は変わらない。

それでは、ベアはどうか?従業員全体の賃金水準・基本給を引き上げるものなので、ベアを実施することにより従業員数、年齢構成を考えない限り、人件費総額が増えてしまう可能性が高い。労働組合がベアを要求しないというのは経営者としては有難い話だ。

経営側は「実力本位」の人事制度を進めていきたいわけであり、従業員にとっては「実力」を示し、会社に貢献することで今までよりも賃金は上がっていく。前向きに捉えて、定期昇給・賞与を強気に要求すればよいということだ。

次に、基本給の議論する時には、職能給と職務給という概念を理解しておく必要がある。

職能給は、職務遂行能力によって決まる給与だが、経験を重ねると能力が上がるという前提で考えられた「メンバーシップ型」の日本企業が取り入れてきた制度だ。一方、職務給は、「ジョブ型」の欧米企業が取り入れている制度で、職種によって給与が決まる。従って、職務ローテ―ションをしながら、ジェネラリストを育ててきた日本企業の風土には職務給は馴染まないという意見も多い。

バブル崩壊後、成果主義を取り入れるという話は何度も聞いてきた。しかしながら、日本では、根強い年功序列型の賃金制度が継続されたため、上手く機能してきたわけではない。中途半端な成果主義の導入により、職務給も結局のところ年功序列が色濃く反映され、世代間格差を拡大させ、特に若手の不満を増幅した可能性すらある。

それでも今回のアンケート結果を見ると、日本企業が「実力本位」の人事制度に舵を切ると従業員が感じているということだ。様々な問題を克服し、若手、中堅、シニア、に加え外国人にとっても、やりがいのある職場となって欲しいものだ。優秀な従業員たちが思う存分その力を発揮することが出来れば、経営者にとっても嬉しい話だ。

それでは、職能給は残るものの、ベアがなくなり、その成果により定期昇給中心に給与が上がっていくこれからの時代に、年功序列型の賃金制度で優遇されてきたと言われるシニアマネジメントたちはこれからどうなるのだろうか?

世の中では70歳定年制の導入が議論され始めた。元気なうちは働きたいという人が多いので、そういう意味では悪いニュースではないだろう。しかしながら、これからの人生100年時代、元気に働いて老後の為に2,000万円貯蓄しておいてという国からのメッセージかもしれない。

経営者にとっては、70歳定年制を導入すると、過渡期では新卒の採用を続ける限り、定期昇給だけでも人件費総額は増えることになる。仕方がないと黙って指を加えている経営者は少ないだろう。人件費総額をコントロールするために、役職定年はよる賃下げ率を大きくするだろう。併せて役職定年の低年齢化も進むだろう。結果として、今後役職定年に伴い転職を検討する人が今まで以上に増えることになるだろう。