暇なときに 国境なき世界に国境を作る英国

英国が1月31日、いよいよ欧州連合(EU)から離脱する。英国はEU加盟国ではなくなるため、EUの政策決定に関与できなくなる。経済への影響という意味では、2020年末までの移行期間中は大きな変化は起きない見通しだが、ブレグジットで英国は今後どうなるのか。


1992年当時、欧州各国は、通貨統合に向けて、域内通貨間の為替レートを事実上固定するEMS(欧州通貨制度)とERM(欧州為替相場メカニズム)に参加していた。 マーガレット・サッチャー氏は、英国独自の金融政策とERMによる為替レート目標とが両立し得ないと考え、ERM加盟には反対だった。どういう事情があったかはわからないが、結果的にERMに参加した英国の景気は、サッチャー氏の予想通り悪化し、失業率は大幅に上昇した。


英国は、景気が低迷していたため、本来であれば金融緩和を行う必要があったが、当時のドイツは金融引締政策を実施中で、英国だけが金利を引き下げれば自国の通貨が売られてしまうリスクがあった。英国はやむを得ず、通貨防衛の為に金利を引き上げたが、投機の動きには逆らえず、結局ERMから脱退することになった。そして統一通貨ユーロにも参加しなかったのである。


その英国が今回はEUから離脱する。自国の通貨発行権、独自の金融政策を維持するという話とEUからの離脱とでは話が全く異なる。欧州統合の歴史の大きな転換だ。


多くの金融機関が欧州における本店機能を既に欧州大陸に移している。今後ロンドン市場で働いていた人たちのフランクフルト、アムステルダム、パリ、ダブリンなどへの転勤の動きは加速するだろう。


ERMから離脱し、ユーロへ参加しなかったにもかかわらず、ロンドン市場に会社、人、お金が集まっていたのは、多くの中卒のたたき上げのトレーダー達にチャンスのある市場であり、自由に競争できる市場だったからだ。これから様々なことが制限される市場になっていくとすれば、魅力は薄れていくだろう。


グローバリゼーションとは多様化のことだ。英国では、行き過ぎたグローバリゼーションにより様々な問題が起き、英国国民は、結果的にはグローバリゼーションに対する反動、多様化に対する反動の道を選んだのである。


短期的にはブレグジットを選んだ人々の満足するような出来事もあるだろう。しかしながら、英国は、効率的な世の中から非効率的な世の中へ、自由な世の中から制限される世の中へ、と変わっていくだろう。国民の選択であり、仕方がないが残念だ。


ブレクジットの国民投票後にシティに行った時に驚いたことがある。92年当時と比べるとシティは人でいっぱいだ。タクシーなど乗る気にならないほど常に大渋滞だ。それも様々な民族で溢れている。国民一人一人がそのメリットに気がつかずにデメリットばかりが気になったのは仕方がないことかもしれない。


それでもグローバリゼーションの動きは止められないだろう。たしかにグローバリゼーションによる歪み、分断は起きている。しかしながら、政治の力で無理矢理それを解消しても、また新たな問題が様々なところで発生するに違いない。

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