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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

なぜ「インターナショナルスクール」は富裕層に人気なのか?

幻冬舎ゴールドオンラインに寄稿しました。


近年、富裕層を中心に、子どもを幼少のうちに海外留学させたり、国内のインターナショナルスクールに通わせたりと、国際感覚を身に着けるための教育がひとつのトレンドになっている。本連載では、グローバルマーケットの第一線で活躍し、現在は留学サポート事業などを手がける株式会社ランプライターコンサルティングで代表取締役社長を務める篠原竜一氏が、グローバル人材を目指す富裕層の教育事情について、実体験も交えながら解説する。今回は、子供の進学先として人気が高まっているインターナショナルスクールの教育について紹介する。


英語を学ばない「インターナショナルスクール」

最近ではグローバル化に伴い、アメリカのボーディングスクール、大学への進学を子供の教育の選択肢として考える保護者が増えてきました。将来子供をアメリカに留学させたいと考えている保護者にとっては、インターナショナルスクールがどういうところなのかはとても気になるところでしょう。


最近ではインターナショナルスクールに関する記事を多く目にするようになりましたが、インターナショナルスクールに子供を通わせるメリットは、「英語力がつくこと」「英語でのコミュニケーション能力がつくこと」との記述があります。もちろん間違いではありませんが、インターナショナルスクールは、“英語を学ぶ”ところではありません。様々なことを“英語で学ぶ”学校です。日本の学校では国語を学びますが、他の科目も日本語で学びます。日本語の習得を目的に日本の学校に行くわけではないのと同じです。


筆者長男は、東京都港区にある西町インターナショナルスクール(西町)に幼稚園から通いましたが、その教育は想像していた以上に素晴らしいものでした。


西町は1949年に設立され、幼稚園から9年生までの約460人が在籍しています。1クラスは20名程度。男女は50/50。西町は、外国人も含め全生徒がそのレベルに応じて日本語を毎日学ぶ老舗インターナショナルスクールです。


創立者の松方種子先生は、「ともに分かち合い、ともに生き、ともに学びつつ、個人の独自性を育てることが、西町における教育姿勢です」という教育方針を掲げました。この方針は現在も大きく変わっていません。


西町は9年生(日本の中学3年生)までの学校なので、卒業後は、他の名門インターナショナルスクールやアメリカのボーディングスクールなど、レベルの高い高校に進学します。西町から直接大学に進学するわけではないので、世間にはあまり知られてはいませんが、西町出身者の大学進学先を見ると驚きます。


アイビーリーグ各校、MIT、スタンフォード大学、シカゴ大学、デューク大学、名門リベラルアーツカレッジ、など世界中のエリートが通うアメリカの最難関大学に多くが進学しています。また、ヨーロッパの名門大学、日本の名門大学の医学部に進む出身者もいます。西町の基礎教育がいかに素晴らしいかがわかります。


西町はWestern Association of Schools and Colleges(WASC)並びにCouncil of International School(CIS)の認定校です。カリキュラムは米国が基本ですが、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドおよび他の国々からの進んだカリキュラムを常に取り入れるようにしているところも特徴です。


そして何よりも西町が日本の教育と圧倒的に異なる点は、“大人から与えられたテストで100点をとることがゴールではない”という点です。


優れたコミュニケーション能力、深い思考力を生徒に求めます。生徒は自主的に学習をすすめ、グループ学習などを通じて協調性の重要さを学びます。そしてその学習を通じて、質の高い成果を生み出すようになります。世界中の様々な価値観を持つ友人と関わり、世界各国の文化を尊重し、思いやりと尊敬の気持ちを持って、責任ある行動をとることができるグローバルリーダーになっていく素地ができ上がっていきます。


出る杭は打たれません。自分が得意なことを更に伸ばすために、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断して行動することを求められます。子供たちは、自己肯定感を高めていき、素直な気持ちで友人に共感することができるようになります。結果として、他者を思いやる気持ちも養われます。


インターナショナルスクールで学ぶ、子供の特徴

インターナショナルスクールに通う子供たちって実際に会ってみるとどんな感じなのでしょうか?


空気を読むことが得意な人たちの中で育っていないので、子供らしい子供が多いというのが筆者の印象です。同時に子供の躾は厳しい保護者が多く、子供たちはきちんとしています。


当時西町の生徒たちと接していて特に感じていたことは、人前でプレゼンテーションするのが飛び抜けて上手だということです。普段はとても可愛い子供たちが別人のように堂々と話し始めるのです。オープンハウスに参加すると生徒が学校案内をしてくれます。参加した保護者の多くが言うことは、「驚きました。自分の子供がこんな風に育ってくれたら嬉しい」ということです。


一方で、保護者にとっても子供と一緒にインターナショナルスクールで学ぶことや、すべきことは沢山あるということを忘れてはいけません。


学校は先生、生徒、職員、保護者で成り立っています。学校行事への参加、そのボランティア、先生との面談、学校長による説明会、そしてパーティーなど、日本の学校と比較すると、保護者はお客様ではなく、学校の一部として当然のように様々ことを期待されるのです。


保護者は、説明会では、堂々と学校長に質問、意見します。一般的に日本人の保護者は静かです。こういう場所で質問をしない人、意見を言わない人は、その議題に100%賛同しているか、興味がないかと理解されます。話が納得いかない方向に進んでしまいそうなときは、思い切って手を挙げて自分の意見を主張する必要があります。発言しない限りどうすることもできません。


生徒は、心の中に思ったこと、感じたことを、言葉にして表現することを日々の授業で求められていますが、保護者も同様です。誰も空気は読んでくれませんし、自分に代わって発言してくれる人はいないのです。


日本の学校では保護者はきちんとした服装をしていることが当たり前です。西町の前に日本の幼稚園に通っていた時に、私がTシャツ、短パン、サンダルで送って行った時がありましたが、噂になったそうです。「あそこのご主人何をやっているのかしら」と。


西町の保護者は、本当に様々でした。先生との保護者面談でも、Tシャツ、短パン、サンダルの保護者もいれば、スーツ姿の保護者もいました。そうかと思えばチャリティーディナーなどでは、いつもとてもカジュアルなアメリカ人がブラックタイと真っ赤なイブニングドレスで踊っていました。


西町のフードフェア(学園祭)は、大きなチャリティイベントです。当時の校長先生と学校の先生たちがバンドを組んで演奏、保護者たちは、ボランティアで大忙し。屋台で自分の国の料理を振舞うのは保護者たちです。


学校内に入ることができる絶好の機会なので、当時は自分の子供を西町に入れたいと考えている保護者の多くが見に来ていました。筆者はどこからどう見ても日本人なので、「西町の父兄の方ですか?」と声をかけられることも多く、よくあった質問は「良い学校ですか?」と「西町にどうすれば入れますか?」でした。当然ながら前者の質問には「すごく良い学校ですよ。おすすめします」 しかし、後者の質問に答えるのは正直難しく、私はいつも「どうしてお子さんを西町に入れたいのですか?」と逆に質問していました。


子供がインターナショナルスクールの教育にフィットするかどうかが最も大切なのは当然ですが、その教育に保護者が共感できるか、そこでの活動を保護者が楽しい、面白いと前向きに取り組めるかもとても重要なポイントです。インターナショナルスクールは、保護者自身も子供とともに学び、成長することができる素晴らしいところです。






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