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Society 5.0 に向けた人材育成  第2回

更新日:2019年3月20日

~社会が変わる、学びが変わる~

Society 5.0 に向けた人材育成に係る大臣懇談会 、新たな時代を豊かに生きる力の育成に関する省内タスクフォースの議論から考える。



http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/06/1405844_002.pdf

                (2018年6月に作成された報告書))



Society 5.0 に向けた人材育成に係る大臣懇談会での議論を見てみよう。


懇談会のメンバーは、Society 5.0 における経済社会と日本社会の課題、人間の強みを以下のように纏めている。


これまで人間でなければ担えないと考えられてきた分野に及ぶイノベーショ ンの連鎖は、我々の社会や生き方そのものを大きく変えていくだろう。


産業そのものが変わる。産業が変われば働き方も変わる。「働くこと」自体の意味も変わっていく。我々人間が現在担っている仕事が、 AI やロボットによって代替されるようになれば、人間の労働力を投入しなくと も生産量を高められるようになり、多くの人が「生きるための」労働から解放さ れ、より「自己実現」や「生きがい」のために働けるようになるとみる向きもある。


AI とその基礎となる数学や情報科学等に 関する研究開発と教育が、米国や中国等に比して立ち遅れている。質と量で圧倒的な“一強”として君臨するアメリカやそれを猛烈な勢いで追い上げる中国等と比べて存在感を発揮できていない。


既に Google や Amazon、Facebook 等が覇権を握る国際的なプラットフォーム・ビジネスに関しては、極めて不利な立場にある。圧倒的なマーケットシェアを獲得し、顧客情報を蓄積しつつあるこれらの“データの巨人”たちと対峙するには、我が国のトップ企業であっても、データ、技術、人材のすべてにおいて文字通り桁違いの力の差があるのが現状である。


人口構造の変化は、世界でまだどの国も経験したことのないものになる。平均寿命が延伸し続け、人生 100 年時代が到来するとともに、少子化がこのままの ペースで進行すれば、2025 年には高齢者1人を支える現役世代の人数が 1.8 人 となると予測されている。これまでのような我が国の経済規模と成長を維持することが難しい状況である。


このような技術の発展と社会の変化は、複雑に影響し合いその速度を指数関数的に増加させ、今後訪れる社会がどのようなものかを正確に予測することを極めて難しくさせている。ただ一つ確実に言えるのは、これまでの延長線を大きく超えた劇的な変化が訪れるであろうということである。

予測困難な社会の変化の中で豊かに生きるためには、楽観論でも悲観論でもなく、変化に対して受け身で対処せずに、むしろ目指すべき社会像を議論し、共有し、実現していくことが重要となる。 我々が目指すべき社会は、経済性や効率性、最適性だけを追求した無機質なものではなく、あくまでも人間を中心として、一人一人が他者との関わりの中で 「幸せ」や「豊かさ」を追求できる社会であるべきであろう。


人間の強みとは何か。それは、現実世界を理解し、その状況に応じた意味付けができることであろう。AI を、人間の能力を補助、拡張し、可能性を広げてくれる有用な道具ととらえるべきであろう。人間は、AI の価値を十分に認識して生活に 生かしていくと同時に、AI がもたらす潜在的な危険性や限界を未然に見いだし、 適切に対処していくことが可能であるし、そうしていくことが不可欠である。 AI やデータの力を活用することで、自らの強みを更に伸ばし、あるいは弱点を補いながら新たな地平を切り拓 ひらいていくことがあらゆる分野で可能になる。


懇談会のメンバーは、Society 5.0 において求められる人材像、学びの在り方を以下のように纏めている。


Society 5.0 を牽引するための鍵は、技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材と、それらの成果と社会課題をつなげ、プラットフォームをはじめとした新たなビジネスを創造する人材であると考えられる。


異分野をつなげることでエコシステムを創造するプラットフォーム・ビジネスの形態は、巨大な規模を持たなくとも、発想次第で新たな価値を創造すること ができる。このようなプラットフォームを創造できる人材には、異分野をつなげる力と新たな物事にチャレンジするアントレプレナーシップが欠かせない。また、課題解決を指向するエンジニアリング、デザイン的発想に加えて、真理や美 の追究を指向するサイエンス、アート的発想の両方を併せ持つ必要がある。これらの資質・能力に加えて、多くの人を巻き込み引っ張っていくための社会的スキルとリーダーシップが不可欠となろう。新たな価値を創造するリーダーであればこそ、他者を思いやり、多様性を尊重し、持続可能な社会を志向する倫理観、 価値観が一層重要となる。


文化、芸術、スポーツ等の人間の創造力により生み出し、人々の共感を生み 発展し続けてきた分野は、ますます社会に求められるものとなるだろう。


懇談会のメンバーが考える共通して求められる力とは?


どのような時代 の変化を迎えるとしても、知識・技能、思考力・判断力・表現力をベースとして、 言葉や文化、時間や場所を超えながらも自己の主体性を軸にした学びに向かう 一人一人の能力や人間性が問われることになる。 特に、共通して求められる力として、①文章や情報を正確に読み解き、対話する力、②科学的に思考・吟味し活用する力、③価値を見つけ生み出す感性と力、 好奇心・探求力が必要であると整理した。


まず、知識・技能としての語彙や数的感覚などの学力の基礎に加え、人間の強みを発揮するための基盤として、文章や情報を正確に理解し、論理的思考を行うための読解力や、他者と協働して思考・判断・表現を深める対話力等の社会的スキルなど、読み解き対話する力が決定的に重要である。


メンバーの考えるSociety 5.0 における学校は?


AI 等が本格的に普及していく中で、教育や学びの在り方に変革をもたらすだろう。


教育用 AI が発達し普及していくことにより、AI が個人のスタディ・ ログ(学習履歴、学習評価・学習到達度など)や健康状況等の情報を把握・分析 し、一人一人に対応した学習計画や学習コンテンツを提示することや、スタディ・ログを蓄積していくことで、個人の特性や発達段階に応じた支援や、学習者 と学習の場のマッチングをより高い精度で行うことなどが可能となるだろう。 ただし、子供たちはデータから必ずしも読み取れない多様な可能性を秘めて いる。データに過度に依存することで、一人一人の成長や変化が正当に評価され ない等の危険性も指摘されている。一人一人の個性やプライバシー等を大切に して、ビッグデータの限界や倫理的課題と常に向き合いながら、その活用を図っていくことが重要であろう。


一斉一律 の授業スタイルの限界から抜け出し、読解力等の基盤的学力を確実に習得させつつ、個人の進度や能力、関心に応じた学びの場となることが可能となる。また、 同一学年での学習に加えて、学習履歴や学習到達度、学習課題に応じた異年齢・ 異学年集団での協働学習も広げていくことができるだろう。 さらに、学校の教室での学習のみならず、大学(アドバンスト・プレイスメン トなど)、研究機関、企業、NPO、教育文化スポーツ施設、農山村の豊かな自然環境などの地域の様々な教育資源や社会関係資本を活用して、いつでも、どこでも学ぶことができるようになると予想される。


こうした多様な学びが関連し合うことで更なる学びの発展にもつながるだろう。AI やビッグデータ等の先端技術が、学びの質を加速度的に充実するものになる世界:Society 5.0 における学校(「学び」の時代)が間もなく到来する。


第3回では、新たな時代を豊かに生きる力の育成に関する省内タスクフォースでの議論を見てみよう。


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