篠原金融塾 国富、20年ぶり水準回復 18年末3,457兆円 続く地価上昇、固定資産最高に ~頑張れ銀行員~
今日の日経新聞朝刊の「国富、20年ぶり水準回復 18年末3457兆円 続く地価上昇、固定資産最高に」という記事について考えてみた。
国民経済計算年次推計によると、官民合わせた国全体の正味資産(国富)は2018年末に3,457.4兆円、20年前の1998年末以来の水準に回復した。
何か凄いことが起きているのかと思う人もいるのかもしれないが、98年と言えば、97年に発生したアジア通貨危機と、その煽りを受けてロシアが短期国債の債務不履行を宣言、新興国の債券・株式が暴落していた時代だ。その影響を受けて、LTCM(Long Term Capital Management)というヘッジファンドが破綻した。LTCMと言えば、ソロモンブラザース出身の債券トレーダー、ジョン・メリウェザー氏が作ったヘッジファンド。何度かお会いし、相場について議論したこともあったが凄い人だなというのが当時の印象だった。
LTCMは、そのメンバーが凄かった。マイロン・ショールズ氏とロバート・マートン氏という2人のノーベル経済学賞受賞者が理論面を支えていた。この2人の貢献抜きにオプション理論を語ることは出来ない。
コネチカット州グリニッジにオフィスがあったが、最高の環境だった。川沿いにあるオフィスにはボートで通勤するトレーダー達もいた。こんな凄いメンバーが揃っているヘッジファンドがロシア金融危機の煽りを受けて破綻したことにとても驚いたことを覚えている。米国30年債の新発債がLTCM破綻で買われた後、3日間でなんと9ポイントも売られた。こんな相場見たことがなく、手も足もでなかった。今では考えられないボラティリティーだ。
当時の日本の金融機関は、海外の金融機関から資金調達する時に金利を上乗せしないと調達できない、所謂ジャパン・プレミアム(Japan Premium)に苦しんでいた。そして前年の97年とともに金融機関の破綻が相次いでいた。当時邦銀のニューヨーク支店で働いた私にはとても辛い時期だった。
今日の日経の記事は、日本の国富が、やっとその時代の水準に回復したという報道だ。中身を見てみよう。