どんな雰囲気か?最高峰の頭脳が集まる「米大学」10校を訪問
米大学ランキングTOP10ラインクイン、名門校を見学
国際的な影響力を持つ日刊経済新聞『ウォール・ストリート・ジャーナル』と、英タイムズ社が毎年秋に発行する高等教育情報誌『タイムズ・ハイアー・エデュケーション』が公表した今年の米大学ランキングのトップ10は以下の通りです(5位と7位に2大学が選出)。
1位 ハーバード大学
2位 マサチューセッツ工科大学
3位 イエール大学
4位 ペンシルベニア大学
5位 カリフォルニア工科大学
5位 プリンストン大学
7位 ブラウン大学
7位 スタンフォード大学
9位 コーネル大学
10位 デューク大学
アメリカのボーディングスクール選びも難しいですが、大学も、総合大学やリベラルアーツカレッジがたくさんあり、志望校選びはとても難しいものです。筆者は、世界最高峰の頭脳が集まる大学がどんな雰囲気なのかを一度は見てみたいと思い、米大学ランキングのトップ10のちの6校を占めるアイビーリーグの8校を訪問することにしました。
ロードアイランド州プロヴィデンスにあるBrown University(7位)のモットーは、“In deo speramus(我々は神のもとに希望を持つ)”。バプティスト系の大学として設立されましたが、設立当初からバプティスト以外の宗教の信仰者も人種や性別に関わらず受け入れたことで知られています。従って、保守的なイメージが強い他のアイビーリーグと比較すると、とてもリベラルな大学と言われています。
実際に学生に会ってみてもその印象は変わりませんでした。Brownの学生は気取っているところがなく、とても親しみやすい雰囲気でした。キャンパスは高台にあり、周辺は高級住宅街で街並みは美しい。Brown Universityと言えばオープン・カリキュラムが有名で、必修科目はなく、授業の選択の仕方も自由でリベラルアーツカレッジのような印象を受けました。
Columbia Universityは、ニューヨーク州のマンハッタンにあります。そもそもマンハッタンというところは働くところで、誘惑が多く、勉強するところではないと思っていました。ところが、キャンパスの中はまったく別の世界でした。建物は伝統を感じさせるものばかりで驚きました。金融、コンサルをはじめ、世界中のトップ企業が集まる街で、当然インターンの機会に困ることはありません。マンハッタンという土地柄もありますが、特に学生の国際色が豊かなことで知られています。学内には留学生が多く、世界中から優秀な人材が集まってくる大学だと実感しました。
モットーは、“In Thy light shall we see the light(汝の光によって我等は光を見る)”。Columbia Universityでは、コア・カリキュラムと呼ばれる教養課程(1、2年生)を全学生必修としていることが大きな特徴です。
Cornell University(9位)は、ニューヨーク州イサカにある創立が1865年とアイビーリーグの中では一番新しい学校です。
モットーは、エズラ・コーネル氏が1868年に語った“~any person ~ any study(どんな道をたどってきた人、どんな経済状況の人、どんな人種、どんな宗教、どんな性別でもCornell Universityの学生になることができ、どんなジャンルの勉強でも自由に取り組むことができる)”というのは、当時としては革新的なモットーだったと思います。新しいとは言っても、ノーベル賞では全部門で受賞者を輩出するなど、研究・教育の両面において世界最高水準の大学です。
その特徴は、最初から男女共学で、実学を重んじ、獣医学、機械工学、ホテル経営学などの先駆けだということです。巨大な学校で、学校の中にいくつものバスが走っていました。4時間半かかるものの、マンハッタンと大学を結ぶバスが毎日走っていて、学生や教職員にとっては便利な足となっています。
学内には、四つ星のスタットラーホテルがあり、ホテル経営学科の学生がインターンとして働く場になっています。ホテルで働くインターンたちの一生懸命さがとても爽やかで、そのサービス内容は素晴らしいものでした。
Dartmouth Collegeは、ニューハンプシャー州ハノーバーというとてもチャーミングな街にあります。まるで絵本にでてくるような街並みです。誰もが一度は見たことのある絵本作家ドクター・スース氏が卒業した大学です。ニューイングランドにあるボーディングスクールを良く知っている人にとってはとても馴染みやすい雰囲気です。
大学のモットーは、“Vox Clamantis in Deserto(荒野で叫ぶ声)”。アイビーリーグの中では一番小さく、リサーチ大学というよりはリベラルアーツカレッジのような雰囲気の大学です。
Harvard University(1位)は、マサチューセッツ州ボストンの近郊にあるケンブリッジという街にある世界一有名な大学です。イギリスで弾圧を受けていた清教徒たちが、新天地を求めてアメリカの東海岸にやってきて、アメリカで最初に作った大学です。
大学のモットーは、“Veritas(真実)”。リーダーとしての人格形成の基盤となる自然科学、人文学、芸術など、あらゆる分野を学び、幅広い教養を身につけることを目指して作られた世界最高峰の大学で、8人のアメリカの大統領を輩出しています。いつ行ってもたくさんの人がいて、学生と観光客との区別が難しいですが、自分の出身のボーディングスクールのトレーナーを着ている学生が多かったのを覚えています。
Princeton University(5位)は、ニュージャージー州プリンストンという街にありますが、ニューヨーク州マンハッタンに近いということもあるのか、ウォール・ストリートで働く若い金融マンのような雰囲気の学生が多く印象的でした。
アラン・ブラインダー氏、ベン・バーナンキ氏などが教鞭をとった学校であり、経済学は全米屈指です。週末には社会人向けのプログラムも充実しており、投資銀行で働く若いバンカー、ヘッジファンドのトレーダー達が集まってきます。またノーベル物理学賞の受賞者が多いことでも知られています。大学院はなく、4年間の学びを大切にしていますが、最近では編入生を受け入れるようになっています。
大学のモットーは、“Dei Sub Numine Viget (神の下で繁栄する)”。学校案内をしてくれた学生に何をやっているのか聞かれ、バンクオブアメリカで働いていると言ったら、早速ニューヨークの人事部から「あなたのことを知っているという学生から会社訪問のリクエストがありましたが、この学生を知っていますか?」というメールがきました。たしかまだ2年生の学生でしたが、この行動力には驚きました。
University of Pennsylvania(7位)は、ペンシルバニア州フィラデルフィアという歴史ある街にるこれぞ伝統校という佇まいでした。大学のモットーは、“Laws Without Morals are Useless(良識のない法は無益である)”。経営学、医学、法律学、教育学、などが世界的に知られており、Wharton School of Businessは世界一のビジネススクールと言われています。
またThe Jerome Fisher Program in Management and Technology (M&T)というSchool of Engineering and Applied Science とWharton Schoolの二つの学位の取得を目指すプログラムも有名です。
コネチカット州ニューヘイブンにあるYale University(3位)の雰囲気は独特です。リベラルなHarvard Universityに対し、コンサバティブなYale Universityと言われています。Harvard Universityと比較されることが多いですが、学生数は約半分で、特にロー・スクールが全米最難関として知られています。
モットーは“Lux et Veritas(光と真実)”。キャンパス内の多くの建物は石造りのゴシック建築で伝統を感じます。学内を歩いている学生を見ていると、政治家、弁護士を意識しているような立ち振る舞いがとても印象的でした。ホテルで朝食をとっていると、周りのテーブルの人達の知的な感じが伝わってきて、圧倒されました。
アイビーリーグだけじゃない、米国の名門大学
アイビーリーグではありませんが、Georgetown UniversityとNew York Universityも訪問しました。
ワシントンにある名門大学のGeorgetown University。政治学、国際関係論を学ぶのであれば地理的には最高の大学です。個人的にはNBA選手パトリック・ユーイング、アレン・アイバーソンの母校であるということに感激しました。バスケットボール部が試合を行う体育館はどこなのか、案内をしてくれた学生に質問すると、バスケット部の試合は観客が多いので、大学の体育館では行われず、八村選手がドラフトされたワシントン・ウィザーズの本拠地で行われるとのことでした。また、丘の上にあるこの大学の学生寮はお洒落で、とても素敵でした。
マンハッタンにあるNew York Universityは、どこが大学なのかわからない面白い大学です。音楽、芸術、に加えビジネスを専攻するのであれば、ブロードウェイ、ウォール・ストリートがあり、環境としては最高です。学生寮も見学しましたが、マンハッタンでこんな暮らしができるなんて羨ましいと思う社会人も多いのではないかと思います。
今回見てきた10校は、すべて東海岸にある大学なのに学校ごとにその雰囲気はまったく違います。大学の歴史はその街の歴史であり、とても感慨深いものです。今では旅する時にはその街にある大学を必ず見に行くようになりました。各大学には必ずブックストアがあり、帽子、Tシャツなど、オリジナルグッズはお土産に最適です。
最後に、筆者がアイビーリーグを実際に訪問して強烈に感じたことは、良い意味で、学内を学部生たちが胸を張って自信満々に歩いているということでした。決して良い気になっているとか、威張っているとか、そういう感じではありません。学生に大学について質問すると、その答えは、自分の大学と自分に誇りを持っているのだと思わせる回答ばかりでした。
訪問後にアイビーリーグの大学院の卒業生たちにこの話をすると、「学部生はみな本当に飛び抜けて優秀で、学部に入学するほうが大学院に入学するより明らかに難しい」という答えが返ってきて納得しました。
学校の成績はオールA、共通テストは満点という多くの世界中の学生たちが受験します。アイビーリーグの学部にはこうすれば合格できるという指標はありませんが、明らかなのは、その競争を勝ち抜いた学生たちには何かキラリと光るものがあるということです。そういう魅力的な学生たちと共に学ぶ日本人が増えると素晴らしいと思っています。
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