篠原金融塾 利上げ相場 グローバルマーケットウィークリー 2/4/2022

イングランド銀行(BOE、イギリスの中央銀行)は3日、政策金利を0.25%から0.50%に引き上げると決定した。ベイリー総裁は賃金の上昇を抑制しなければインフレが制御不能になる恐れがあるとの見解を明らかにした。


同じ日に開催された理事会で欧州中央銀行(ECB)は、主要政策金利を予想通り据え置いた。ラガルド総裁は、ECBは政策行動を急がないと述べているものの、市場は年末までにECBによる50bpの利上げを織り込みにいく展開となっており、欧州国債は大きく売られ、金利は急激に上昇している。


4日に発表された1月の米雇用統計は驚くほど強い。非農業部門就業者数(季節調整済み)は市場予想(15万人増)を大幅に上回り、前月比46万7000人増加した。特にレジャー、ホスピタリティー、小売り、輸送、倉庫などの業界で就業者数が増えている。加えて、2021年11月と12月の就業者数は合計70万人余りも上方修正された。失業率は若干上昇して4%となったが、労働参加率は62.2%と、コロナ後で最高に達している状況だ。平均時給は前年同月比5.7%上昇した。これを受け、米国債金利も大きく上昇している。


BOEによる利上げが実施され、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げが3月に実施され、そして引き続き慎重であるもののECBによる最初の利上げは年内に実施されるだろう。

斯かる状況下、興味深い記事を見つけた。WSJ経済担当チーフコメンテーターであるGreg Ip氏が、「FRBが3月から始めると発表した金融引締は、1980年よりも後に生まれた人にとっては見たこともないものになるだろう」と述べている。


どういうことだろうか?


FRBによる利上げと言えば、インフレファイターだったボルガー元FRB議長が有名だが、グリーンスパン元FRB議長の実施した94年の利上げも同じくらい有名だ。グリーンスパン氏は、それまで3%に据え置いていたFF O/N金利を95年にかけて6%まで引き上げたが、初回の利上げ時に「Pre-emptive」という言葉を使ったことで知られている。当時トレーディングフロアでは、この解釈については意見が分かれていたのをよく覚えている。予防的な利上げというのだから、そんなに連続的な利上げには繋がらないのではという見方が太宗だったが、実際にはインフレ率の大幅な上昇を避けるためには、結局3%→6%への大幅な利上げが必要だったのである。


Ip氏は、94年の利上げは、インフレ率の押し下げではなく、その上昇を防ぐことを意図した予防的な措置だったが、現在は既にインフレ率が非常に高く、FRBは利上げに関して大きく後れを取っており、景気やインフレに関する今後の統計の内容にはほぼ関係なく、利上げが必要になっている状況だと分析しており、想定外の悪いことが起きたり、市場の変動率(ボラティリティー)が高まったり、債券の利回り上昇や株価のバリュエーション低下という形でリスクプレミアムが発生したりすることはあり得るだろう。」と述べている。本来であれば、インフレ率の上昇を防ぐために利上げが実施されるが、今回はインフレ率が既に大幅に上昇してしまっており、FRBの政策は明らかに後手に回っているという見方だ。


市場には、「デフレからの脱却は難しい」という見方が浸透しているが、何となく「インフレのことはそんなに心配しなくて良い」という雰囲気が醸成されているが、実際には「インフレ退治も容易ではない」と私は思う。


私は、グローバリゼーションとは多様化と効率化の歴史であり、世の中をディスインフレ的な世の中へと導いたと考えている。80年代、90年代とは状況が異なり、単純に比較できないのは当然だが、グローバリゼーションが進展する中、そのプラットフォームを牛耳ったアメリカは、シリコンバレーを拠点として新しい価値を生み続けている。そのアメリカのインフレ率が2%を大きく上回っているのである。多様化と効率化の動きは今後も継続すると思われるものの、短期的にはグローバルサプライチェーンの目詰まり、原油価格の上昇などインフレ要因を抑え込むのは簡単ではない。これを抑え込むために、景気やインフレに関する今後の統計の内容にはほぼ関係なくFRBが利上げを実施するとなれば、最近では経験したことのない金融引締がグローバルに実施されることになる。


日本でも日本国債が売られているが、欧米の国債市場と比較すれば誤差程度の値動きだ。引き続き蚊帳の外と言っても良いだろう。日本では引き続き需給ギャップを埋めないといけない状況であり、金融政策の出口は見えない。


北京オリンピックがいよいよ始まった。素晴らしい開会式だったが、それを楽しむ暇はないかもしれない。各国中央銀行の金融政策の方向性で乖離が起きると市場では何かが起こる。Ip氏の懸念が顕在化される日は遠くないかもしれない。




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