暇なときに ボストンキャリアフォーラム オンライン 2020
世界的に経済は停滞している。採用活動を縮小する会社も多い。そんな状況の中、ボストンキャリアフォーラムが今年も開催される。ボストンキャリアフォーラムは、世界最大の日英バイリンガルのための就職・転職イベントで、毎年10月若しくは11月の金土日にボストンで開催されるが、面接・レセプションなどを通じて、選考を行い、その場で内定を出す会社も多いので、学生には人気のキャリアフォーラムだ。
事前に書類選考に加え、何度も電話・スカイプ・ズームなどで面接を実施し、最終面接をボストンキャリアフォーラムの会場で行う会社も少なくない。気になる会社のブースに履歴書を持ってウォークインすることも可能だ。例年、全米中の大学生・大学院生・日本の大学生、そして日系企業・外資系企業の人事担当者、採用責任者などが一斉にボストンに集まる。参加企業はキャリアフォーラム前日の木曜日に会社説明・一次面接を行うブースのセットアップ、面接を行うバックルームの確認などを行う。また、事前に面接を行った学生を招待して行うレセプションも木曜日の夜から盛んに開催される。木、金、土曜日全ての夜の予定が事前に決まっている学生も中にはいるようだ。学校の授業の都合があるからといって日曜日だけに参加するのは得策ではない。殆どの会社が土曜日までに既に選考作業を終了している。日曜日に学生が訪ねてくれば勿論対応するが、日曜日は若手の社員がブースの片づけを行っている会社が多い。
例年この時期のボストンのホテルの値段は跳ね上がるので、早めの予約が重要だ。街中には多くのリクルートスーツを着た日本人学生で溢れるので、ちょっと異様な雰囲気だ。昨年度は241社が参加した。
そんなボストンキャリアフォーラムだが、今年は、新型コロナ感染拡大を受け、移動が制限される中、例年会場で行われるセミナー・面接等が4か月間(1st Live 9/11-13, 2nd Live 10/9-11, 3rd Live 10/23-25, 4th Live 11/6-8、米国東部時間)のオンラインイベントで実施されることになっている。初めての取り組みだ。9/1現在123社が参加することになっており、うち74社は既に応募を受付けている。
今までは実際にボストンまで行かないと参加することが出来ないイベントだったので、参加を諦めざるを得ない学生・企業も多かったはずだ。しかしながら、今年は全てオンラインで進めることができるので、世界中のどこからでも参加が可能だ。
参加資格は、日英バイリンガルで以下のいずれかの条件を満たす方とある。
・日本国外の大学の学士又はそれ以上(修士、MBA、博士等)の学位をお持ちの方、又は取得予定の方
・交換留学経験をお持ちの方で日本の大学の学士以上の学位をお持ち(取得予定)の方
・留学経験をお持ちの職務経験者や海外での職務経験をお持ちの方
・海外での生活や経験の長い方
おそらく学生の参加者数は例年以上になるだろう。4年生にとって卒業後の就職先を決める重要なイベントだが、外資系企業を中心に多くの会社が正社員のみならず、2021年夏のサマーインターンシップを募集するため、大学3年生にとっても重要なイベントだ。景気が悪くなり、やむを得ず、正社員の採用を見送る場合でも、サマーインターンシップの募集は継続する企業が多い。
そもそもボストンキャリアフォーラムは、日本の一斉新卒採用のスケジュールにフィットしないアメリカの大学・大学院に通う日本人学生向けに始まったものだ。アメリカは広い。今年は、留学生にとってはボストンに行かなくてもオンラインで面接が受けられるので、日系企業への応募が今まで以上に容易になるはずだ。一方、外資系企業で働いてみたいという希望を持つ日本の大学に通う学生にとってもチャンスだ。ボストンキャリアフォーラムオンラインへの参加で多くの外資系企業にアプローチすることが出来る。参加学生数が増えるので、企業にとっても選択肢が広がる。
子どもの大学受験がやっと終わって、これでやれやれという大学生の保護者も多いだろう。18歳になり選挙権も与えられ、大学生として勉強を通じて、これからの人生を自分で考える4年間だ。もう大学生になったのだから子どもの自主性に任せる。極めて全うな考え方だ。
しかしながら、保護者が知っていたほうが良いことがある。それは大学生になり目標を失う学生が少なくないということだ。優秀な学生ほど目標を失ってしまう。小さいころから問題を与えられ、その問題の正解を求める訓練を受けてきた子どもたち。いきなり自由な世界へ放り出されてもどうしてよいかわからない。「君は将来何をやって生きていきたい?」と問いかけられた時に答えられない学生が殆どだ。
今の若者だけではない。高度成長時代、バブルの時代に就職活動をしていた人たちもこの問いには答えられない人の方が多かっただろう。でも、あの当時はそんなことを考えなくても、何となく大学に通い、卒業さえ出来れば、仕事を見つけることはそんなに難しくはなかった。世界の時価総額トップ10に多くの日本の企業がランクインしていた時代だ。
平成の時代、そして令和の時代はあの頃とは全く様相が異なる。外資系企業は学校の成績を重視する。一定の成績をとっていないと書類選考に通らない時代だ。世の中が大きく変革する中で、きちんとした情報・戦略なしには納得のいく就職先を見つけることが難しい時代になっている。学生時代の経験を通じて何かを学ぶだけでは通用しない時代が到来している。情報を収集し、仮説検証を繰り返し、自分で判断し、決断し、行動する、という訓練を大学での勉強を通じて学ぶ必要がある。
一体何のために勉強してきたのか?本来は、よりよい人生を送るために正しい判断をし、決断し、行動するために勉強してきたはずだが現実は違う。多くの学生はテストで満点を取る訓練を受けてきただけだろう。今年は、日本の大学に通う学生にとって、ボストンキャリアフォーラムで実際にアメリカの大学で学ぶ日本人学生と会うことが出来ないのは残念だが、同時に繁華街で毎日飲み歩くことも出来ない状況だ。オンラインではあるもののボストンキャリアフォーラムに参加してみるチャンスだ。
アメリカの大学に通う学生の英語力に圧倒されるのは当然だが、本当に圧倒されるのは英語力ではなく、圧倒的な勉強量に裏付けられた自己肯定感の高さだ。レセプションなどで意見を求められた時に真っ先に話し出すのは決まってアメリカの大学に通う学生だ。時には中身のない自分をアピールするだけの学生がいるのも事実だが、それに反論するのもアメリカの大学に通う学生だ。日本の大学に通う学生も質の高い、中身のある答えを持っていることが多いのだが、発言のチャンスがなかなか回ってこない。話すチャンスはあったのに、自分から手を挙げて話さなかったことに後悔することも少なくないだろう。こういう経験を通じて人は刺激を受け、成長していく。
今年は、飛行機代・ホテル代など心配する必要がない。大学1年生、2年生にとっても来年のサマーインターンシップが見つかるかもしれない。見つからないとしても少なくとも数多くの会社説明、識者の特別講演に参加することが出来る。素晴らしい機会だと思う。新型コロナで実際に大学のキャンパスに通えない学生も多い。だからこそ逆に自分のキャリアについて真剣に考えることに時間を使ってみても良いのではないだろうか?
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