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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 日本の生命保険会社の運用計画

更新日:2020年4月29日

日本の生命保険会社の運用には定評があり、この時期には世界中の投資家が日本の生命保険会社が公表する運用計画に注目している。そんな中、第一生命保険が、2020年度の一般勘定資産運用計画を公表した。運用難からインフラや国内外不動産をはじめとする実物資産へ投資をしていく方針となっている。

円金利・外貨金利とも超低金利が続いている。株式市場はボラタイルな展開が続いており、なかなか難しい。新型コロナウイルスの収束期待の高まりにより年度末には実物資産には資金が戻ってくると考えているようだ。

そもそも2019年4月からの運用にはどんな特徴があったのだろうか?公表されているデータは2019年12月末のものだがその運用は以下の通りとなっている。

有価証券の残高は、33兆9,414億円。凄い残高だ。2019年3月末と比較すると1兆1,710億円の増加となっている。その太宗は、その他有価証券の積み増し。2019年12月末の残高は、9,955億円増となっている。

その他有価証券とは、米国の会計ではAvailable for Salesと言われる区分だ。ここでは会計上の細かい説明は省略するが、その他有価証券の内訳を細かく見てみる。

日本国債など公社債は若干減少。日本株は1,342億円エクスポージャーは増えている。

外国証券を見てみると、公社債を5,584億円、大きく買い増している。外国株式については若干の増加だ。その他の有価証券のその他の証券は何だかわからないが、エクスポージャーは、2,678億円増えている。

次に含み損益だ。6兆4,493億円。これも凄い金額だ。仮に、第一生命が保有する約34兆円の有価証券を2019年12月末に全額売却したと仮定した時の収益額だ。

今年に入って1-3月の相場は凄い値動きだった。当然日本の生命保険会社各社も動いただろう。株式市場は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、グローバルに大幅下落となった。積極的な金融政策、財政政策にもかかわらず、先行き不透明感を払拭することが出来ず、市場のボラティリティーが急上昇した。

昨年末には、第一生命も日本株を約3兆5千億円保有していたわけで、含み損益は大幅に減少しているはずだ。

次に、国債市場を見てみる。新型コロナウイルスの感染拡大、それを受けてのFRBによる金融緩和を受け、米国債が大きく買われた。欧州債はイールドカーブがフラットニングしたが、各国によってその値動きは異なるものとなった。ドイツ国債はブルフラットニング(買われながら、イールドカーブが平坦化)。フランス国債は大きくレベルは変わらなかったもののイールドカーブはフラットニング。イタリア国債は短期物が大きく売られる形でのベアフラットニング(売られながら、イールドカーブが平坦化)。日本国債は略変わらず。

ということは、昨年末に外国公社債を約9兆4千億円保有していた第一生命の外国公社債の含み益は大きく増えているはずだ。

為替は乱高下したものの終わってみれば若干の円高だったので、オペレーションに大きな影響は与えていないだろう。原油価格が大幅に下落、金価格は上昇の影響どの程度あったのかは公表データからは分からない。

というわけで、1-3月は、株式ポートフォリオの損失を債券ポートフォリオの利益で埋め合わせをする形になっているはずだ。実際にどうなっているかは決算発表が楽しみだ。

最近のグローバルマーケットは若干落ち着きを取り戻し始めたが、こういうボラタイルな市場が続く中、第一生命のような世界有数の機関投資家がゴールデンウィーク明けから動いてくる。その動向はとても気になる。


議論が分かれるのはポスト新型コロナの世界経済の行方だ。

第一生命は、各国の大規模な財政・金融政策で景気が下支えされている間に、ワクチン開発で新型コロナウイルスの収束期待が高まり、底ばいながらも年度末に向けて景気が回復していく「U字型」回復をメインシナリオに掲げている。そうだとすれば、実物資産中心に大きく値を戻すことになる可能性もあるだろう。

なかなか予想が難しい新年度の始まりだ。

第一生命の運用計画のサマリーは以下の通りとなっている。ご参考迄。

20年度の相場見通し(レンジと年度末)は以下の通り。▼はマイナス。

日本国債10年物利回り ▼0.20―0.20%(年度末0.00%)

米10年債利回り    0.00─1.50%(同1.00%)

日経平均        1万6000─2万2000円(同2万0000円)

米ダウ         1万8000─2万8000ドル(2万4000ドル)

各国の大規模な財政・金融政策で景気が下支えされている間にワクチン開発で新型コロナウイルスの収束期待が高まり、底ばいながらも年度末に向けて景気が回復していく「U字型」回復がメインシナリオ。 リスクシナリオは、企業のデフォルト増加などのクレジットイベントが発生、金融市場全体で一層の信用収縮が起こることでより深い景気後退に陥るというもの。

円建て債券は、責任準備金対応債券の積み増しや入替売買などで資産デュレーションを調整。プロジェクトファイナンスやアセットファイナンスなどへの投資も行い、全体の残高は増加する見込み。

国内株の残高は19年度に引き続き、全体の残高は減少する見込み。

米ドル・ユーロがメインで全体の7割超がヘッジ外債。機動的にコントロールする方針。新興国への投資は抑制。オープン外債の残高は19年度に減少。20年度もリスク許容度や為替をにらみながら調整していく。

オルタナティブ資産の残高を積み増し。インフラや国内外不動産をはじめとする実物資産ファンドへの投資を推進。引き続きバイアウトファンド、ベンチャーファンド、インフラファンドなどへの投資も強化。

不動産は19年度に続き残高増を計画。賃貸マンションや商業施設、物流施設などへ分散投資を推進すると共に開発事業への参画など新規の不動産開発にも注力。

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