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執筆者の写真Ryuichi Shinohara, CEO

篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 6/4/2021

FRBが望んでいるシナリオは、テーパリング(資産買入れ縮小)に関する議論に着手し、経済状況を確認した上で、慎重に資産購入額をゼロまで減らすということだろう。そして、その後緩やかな利上げが開始出来れば最高だ。


そんな中発表された5月の米雇用統計は、非農業部門の就業者数が前月比55万9000人増加。市場予想の67万人増は下回り、米国債は買われての越週となったが、大きな伸びであることは間違いなく、FRBのメインシナリオは変わらない。労働市場がFRBの想定以上に過熱している訳でも、想定以上に回復が遅れているわけでもなく、債券市場にとっても、株式市場にとっても良い感じだ。


市場予想ほど就業者数が伸びないのは、おそらく失業保険の特別加算延長により賃金の低い職種の魅力が低下したことが大きく、企業によっては、採用に困っている状況ともいえるのではないか?


時間当たり平均賃金は前月比0.5%増と、市場予想の0.2%増を上回る伸びだ。特にホスピタリティ業界での賃金上昇は顕著だ。市場ではインフレ動向に注目が集まるが、ワクチン接種が更に進み、感染者が減少し、リモートワークから通常勤務に戻り、レストランなどの通常営業が再開され始めたアメリカ。失業保険の特別加算が終わる9月まで待たないと景気・インフレ動向のトレンドを見極めることは難しいが、正常化の動きが続いている。


インフレ指標の発表、FOMCを控え、当面市場は神経質な展開が予想されるが、アメリカの労働市場の状況はコロナ禍以前の水準を引き続き760万人下回っている。従って出口戦略の議論は開始するが、金融引締は時期尚早というのがFRBの立ち位置であり、大きな金利上昇がない限り、株式の底値も固くなるのではないだろうか。

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