10日に発表されたアメリカの5月の消費者物価指数(CPI)は、8.6%(前年同月比)と私がマーケットを追いかけ始めてから最大の上昇率となった。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアのCPIは6%と2~4月より若干鈍化したが、それでもインフレ率の上昇がピークを打ったと安心できる状況ではない。来週の連邦公開市場委員会(FOMC)で主要政策金利の誘導目標を50ベーシスポイント(bp)引き上げる可能性が高い。
5月のサービス価格は前年同月比5.2%上昇した。コロナ感染症への懸念が後退する中、人々は旅行や外出などの活動を再開している。とても連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとは思えない。米国債は短期セクター中心に激しく売られ、イールドカーブはフラットニングしている。
そんな中、欧州中央銀行(ECB)は、大規模な債券購入プログラムを7月1日に終了する予定だが、これに併せ、7月に主要政策金利を25bp引き上げてマイナス0.25%とし、その後も利上げを継続する方針を示した。声明では異例だが、利上げ幅にも踏み込み、次回7月の会合で25bp、9月は25bp以上を想定していると明らかにした。ECBは、インフレに対処するために金融引締に動く。これを受け欧州債金利は大きく上昇した。
これだけ欧米金利が上昇すると株式市場の頭は重い。ドル円は134円台半ば、ユーロ円は141円台半ばでの越週となった。FRB、ECBが金融引締を実施する中、異次元の金融緩和政策を日銀は継続している訳で、これからも金利差は拡大、円安は続く。短期的には135円、140円という節目では跳ね返されるだろうが、金融政策の方向性が正反対であり、円安が続くと考えるのが自然。14、15日に開催されるFOMCを控え、マーケットは荒っぽい展開が予想される。
教科書を読めば、日本経済の需給ギャップはマイナスだから、それを金融政策で解消するためには金融緩和が必要だと書いてある。そして、需給ギャップのマイナスの解消こそが日本経済にとって最大の課題との認識から、当然のごとく日銀は金融緩和を継続している。円安については、日銀も財務省も日本経済にプラスだと主張している。異次元の金融緩和下、財政政策にて物価高への対策を実施するというのが現在の日本の対応だ。
しかしながら、資源高と円安により、輸入物価指数が40%以上も上昇している悪影響についてはどう考えているのだろうか?本当に大丈夫なのか?私には今の日本の政策で日本経済が上向くとは到底思えない。金融緩和では需給ギャップのマイナスを解消することが出来ないと大々的に問題提起する政策委員はいないのでしょうか?第一の矢で大胆な金融緩和、第二の矢で機動的な財政政策、第三の矢で民間投資を喚起する成長戦略、を掲げた日本。素晴らしい政策だったと思う。しかしながら、第一の矢も第二の矢ももはや大胆でも機動的でもない。それが当たり前のことになっている。そして、最も重要な第三の矢、規制緩和等によって民間企業な個人が真の実力を発揮できる社会の実現はどうなっているのでしょうか?
この10年で、マクロ的には多くの改善された点を掲げることは出来るでしょう。でもその結果として賃金が大きく上昇するような結果には残念ながら繋がっていない。例えば、ガソリン価格・小麦価格を税金で抑えるより、新しい価値を生みだそうと、再生エネルギー、アグリテックなどに必死に取り組んでいる個人、企業に対して投資することの方が、余程意味のあることではないでしょうか?
第一の矢、第二の矢でこの国を大きく動かすことが難しいのであれば、民間の力で成長していくしかありません。成長だけが全てではないという考え方を否定することは出来ないでしょう。勿論、楽しいことも悲しいことも皆で分かち合ってより良い日本を創っていこうという強い意志は必要だが、国民一人一人が成長している実感が持てなければ、この国はどうなってしまうのでしょうか?
欧米の金利上昇はまだ始まったばかり。世界の物価上昇がピークを打つのもまだ先のことだ。まだまだ金利は上がる。新しい価値を生みだそうとコロナ後の世界は既に動きだしている。今がチャンスだ。しかしながら、遅かれ早かれ世界景気が減速する時が来る。それを契機に円安の動きは止まるだろう。残念ながらチャンスは待ってくれない。
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