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篠原金融塾 人口動態とインフレ率 グローバルマーケットウィークリー 5/14/2021

FRBに一時的だから大丈夫と言われても、コアCPIが実際に3%に上昇すると、さすがに市場は大きく動揺した。週末に向けて落ち着きを取り戻したものの、今後のインフレ動向は気になる。そうは言っても、インフレは30年以上も全く心配する必要がなかったので、なかなか想像力が働かない。


そんな中、ウォールストリートジャーナル紙の経済担当チーフコメンテーターであるグレッグ・イップ氏の5/13付けの記事はとても面白い。イップ氏は、記事の中でチャールズ・グッドハート氏とマノジュ・プラダン氏の著書「The Great Demographic Reversal: Ageing Societies, Waning Inequality, and an Inflation Revival(人口動態の大いなる逆転:高齢化社会、不平等の減少とインフレ復活)」を紹介している。


「労働者は生産が消費を上回る。子どもと退職者に関しては消費が生産を上回る」

「子どもと退職者はインフレを誘発している」

「高齢化は、豊かな労働力と低いインフレ率に慣れきった経済に与える影響が大きい」


2010年から2020年の間にアメリカの人口は約7%、中国の人口は約5%増加したが、アメリカの労働力人口の伸び率はわずか2%、中国の労働力人口は5%減少している。こうした流れを逆転させるには、出生率の劇的な上昇か、または移民が必要になるが、なかなか難しい。


労働者が減ることにより生産が減少し、子どもと退職者が増えれば消費が増える。結果として生産が消費に追いつかず、インフレ率は上昇する。


過去30年間で先進国の労働供給(中国と東欧が主因)は実質2倍に増えた。この結果、労働コストと労働者の交渉力に下向きの圧力がかかったが、この動きは現在、子どもと退職者の数が労働者より急速に増える中で覆されつつある。退職者は貯蓄を引き出す。企業は縮小する労働者を埋め合わせるため、より多くの投資を行う必要がある。結果として、ここ数十年間にわたって金利を下押ししてきた「世界的な貯蓄のだぶつき」を切り崩し始める。


インフレが実際に高進するかどうかは正直わからない。しかし、人口動態の変化は、デフレ圧力に直面する中でインフレ率を上げようとする戦いから、インフレ圧力の中でそれを抑えようとする戦いへと、中央銀行の課題を変化させる可能性があるという意味でとても興味深い内容だ。


しかしながら、日本では2008年に人口はピークをうち、少子高齢化、人口減少時代に突入しているが、インフレや金利面で明確な影響は出ていないので、今一つ説得力がないのも事実だ。記事では、日本でインフレが生じていない理由の一つは、金融危機の後で民間投資が大幅に落ち込んだことがあるかもしれないと説明している。その落ち込みは、政府による借り入れによって部分的に相殺されただけだったから、インフレになることはなかったということだが、「なるほどね」とまで納得できる説明ではない。


イップ氏によれば、中国人民銀行は、最近の論文で、「消費は決して成長要因とはならない」と主張している。人口問題を認識しているとしながら、それに伴って貯蓄や投資を引き下げることには反対の立場を表明しているという。これが本当であれば中国の貯蓄と投資が世界的なインフレや金利を押し下げてくれるかどうかが世界経済にとって重要な問題だということになる。


中国が貯蓄・投資を減らすと世界がインフレになる。興味深い。。。





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