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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

暇なときに 新しい働き方

日経新聞の“「あえて退社」タニタの選択 社員を個人事業主に”という記事を読んだが、なかなか面白い。

この会社の大きな課題は、実力は認められているものの、何となく閉塞感を抱えている社員が多く、「どうすれば社員のやる気を刺激できるか?」ということだったらしい。

そして、それを克服するために、仕事と報酬を1年ごとに見直して3年契約を結び直す、業務委託契約方式を導入したという。就業規則に縛られず、いつどこで何時間、働くかは社員の自由だ。業務委託契約に移行すると自分の市場価値を意識し、経営学修士(MBA)を取得するために学校に通う社員まで出てきたという。

こういう働き方を社員に提供する会社がある。面白い。

同じく日経新聞の“さらば平等、新人から給与格差 ソニーの覚悟”という記事も非常に興味深い。

典型的な日本の企業の人事制度は、終身雇用と年功序列を前提に職務や勤務地を限定せずに働く「メンバーシップ型」だが、解雇なしが原則の日本型は突然の解雇リスクがない分、給与水準は解雇ありの欧米型よりも低くなるため、優秀な人材の採用が難しくなっているというのが背景にあるのだろう。

そこでソニーは、「初任給」は横一線でスタートという平等原則を見直し、能力などで個別に給与を決める欧米型に近づけようという取組みを始めたそうだ。責任や役割に応じて報酬に差がついていく。採用に関しても人事部だけでなく、個々の事業部門が採否に関わるようになったという。

タニタ、ソニー共に、社員に思う存分力を発揮してもらうために、各自の責任や役割を明確にし、その成果に応じた処遇をしていくという取組みを実施している。

新型コロナウイルスの感染拡大が学生の就職活動にも大きな影響を与えているようだが、今まで我々が慣れ親しんできた終身雇用・年功序列の人事制度そのものが大きく変わっているということを学生が理解することは非常に重要だ。

外資系投資銀行で働いてきた私にとっては、現場による面接、現場による採否の決定、職務に基づく給与体系、パフォーマンスに応じた賞与額の決定などは目新しいことではない。しかしながら、そんな私でも社員から業務委託契約への変更、新入社員に対して給与格差をつける制度は新鮮だ。

今後採用基準自体が大きく変わる可能性もある。人事部の面談と現場の面談では、質問内容も大きく異なるだろう。立場が異なれば求める人材が変わっても不思議ではない。

例えば、人と話すのは苦手だが数学をやらせれば凄い、成績は悪いが世界史が大好きだ、昆虫の話をさせたら終わらない、など、何か一つでも人に負けないものを持っている学生を探し出すのは人事部が中心になって行っていた採用では難しかったかもしれない。しかしながら、今後はこういう学生に人気が集まる時代が来るのかもしれない。

こういう変革の時代は、大学の教授、キャリアコンサルタントなど学生と関わりを持つ社会人の役割は今まで以上に重要だ。日本型と欧米型の雇用、人事制度の違いを理解するのはそんなに簡単なことではない。従来の日本の企業の人事制度を前提とした就職サポートは大きな転換点を迎えているのかもしれない。

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