篠原金融塾 金利を引き上げる?
ヘッジファンドに対するアドバイザーであるAvi Tiomkin氏の「世界経済の崩壊を防ぐには」という記事が結論は賛成できないものの、内容は面白かった(バロンズ 2019 年 9 月 10 日)。
結論から言うと「大規模な政府支出と金利引き上げ」が必要との考えだ。現代においては、金融政策が景気後退と戦うための主要な手段となってきたが、この戦略は効力を失っているとTiomkin氏は主張する。
私は、MMT(現代貨幣理論)には否定的な人間であり、大規模な政府支出という部分は大反対だが、金利引き上げが必要と言う部分は大賛成だ。
Tiomkin氏は、世界市場におけるエネルギー余剰とほぼ無制限の労働力に拡張的金融政策が加わると、世界に増えるのは需要ではなく供給であると考えている。これについては別の経済学者が超低金利政策は投資を増やすことには繋がるが、供給を増やすだけで、需要を生み出さないと主張しているのと同義だ。
そして、低金利と高齢化は、低金利による収入減の代替として貯蓄の増加と消費の減少につながるという。典型的な例は日本だ。
Tiomkin氏は、このままでは、これがアメリカでも起きるかもしれないと言っている。
米国経済は成長を続けているが、金利に対する下げ圧力は、他地域で起こっているような家計消費の急激な減少を引き起こす可能性がある。低金利は銀行や預金者にとって悩みの種である一方、自社株を買い戻し、M&A(合併・買収)を実施する事業会社にとっては恩恵となっている。企業は流動性を自社株買いや買収に充てることで、研究開発や事業投資を犠牲にしている。低金利は経済的考慮を歪めているという。
Tiomkin氏は、低金利によって引き起こされた慢性的なデフレ、弱い経済、格差の拡大は、常に政治的・社会的過激主義につながると主張している。