篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 11/6/2020
米大統領選挙は、バイデン氏290 vsトランプ氏214となり、ジョー・バイデン前副大統領が270人を超える選挙人を獲得し、勝利した。トランプ大統領が敗北を認めれば、バイデン氏が第46代大統領に選出されるが、トランプ大統領はこれまで敗北を認めていない。トランプ陣営は複数州における集計プロセスを巡り提訴している。
ただの風邪と新型コロナ対策を軽視したトランプ大統領が新型コロナウイルスに負ける。今回の大統領選挙では、感染拡大により記録的な数の期日前投票が投じられ、その票数は約1億票に上ったと言われている。結局、その多くが接戦州でバイデン候補をサポートすることになった。
市場参加者は、ここからは上院選挙結果を気にしたほうが良い。
上院(Senate)は100議席。選挙前は、共和党53議席、民主党45議席、その他2議席。任期6年の上院議員は約3分の1の35議席が改選対象。日本時間8日午前0時時点の集計で、非改選を含め共和、民主両党がそれぞれ48議席となっている。
残り4議席がどうなるか?
仮に50議席ずつで同数となると、上院の採決で可否同数の場合、副大統領に1票が与えられ、ねじれ議会は解消する。
ノースカロライナ、アラスカ州では、共和党が優勢となっている。ジョージア州では、改選議席に加え、任期中だった議員の辞職に伴う1議席が争われているが、大接戦。共和、民主両党の上位2人による決選投票がそれぞれ行われる。
下院(House of Representative)は435議席。選挙前は、共和党197議席、民主党232議席、その他6議席。任期2年の下院議員は全議席が改選対象。現在、共和党195議席、民主党214議席が確定しているが、民主党が過半数の218議席以上を確保する見込みだ。
選挙前は、バイデン候補が勝ち、議会も民主党の圧勝を予想する向きが多かったため、市場では大型の景気対策が策定されるとの観測が高まっていた。大型財政政策で米国債が大幅に増発されるという懸念から、米国債金利は、ベアスティープ(年限の長い国債金利がより上昇)するだろうと予想する向きが多かった。
しかしながら、選挙は大接戦、議会選挙でも共和党が健闘、上院は引続き共和党が過半数を維持できそうであり、ねじれ議会が解消されないとの見方が市場に広まり、市場参加者の米国債見通しは悲観的過ぎるという声も出てきていた。
ここからのポイントは、1)トランプ大統領がいつ敗北宣言を行うか? 2)上院・下院の勢力、特に上院がどうなるか?の2点。
上院での共和党の過半数が維持されるとすれば、1)ねじれ議会であること、2)新型コロナ感染拡大が止まらないこと、などから、大きく金利が上昇するとは思えない。逆にイールドカーブがフラットしながら金利が低下する動きには市場は準備が出来ていないので要注意だ。
今週は、財務省が3,10,30年債の米国債の入札を実施するが、順調に消化されるのではないだろうか?
一方、上院での民主党の過半数が実現すると、ねじれ議会が解消することから、大型財政策+増税懸念の再燃で、米国債金利が大幅に上昇する可能性があることを頭に入れておいた方が良い。その時には米株にも売り圧力となるであろう。
金曜日に発表された10月の雇用統計は、失業率が6.9%と予想以上に低下、非農業部門就業者数は、前月から63万8千人増えており、失業者数は1,100万人まで減少している。4月の雇用統計の失業率14.7%、失業者数2,300万人と比較すると大幅に状況は改善しており、労働市場は着実に回復している。しかしながら、新型コロナ感染拡大前の失業率は3%台、失業者数は500万人台だったことを考えるとまだまだ道半ばだ。このタイミングで新型コロナ感染拡大が止まらず、加えて次期大統領が決まらないのは大問題だ。どちらでも良いから次期大統領を早く決めてくれと一番思っているのはパウエルFRB議長かもしれない。
欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁は6日、第4・四半期のユーロ圏はマイナス成長になる公算が大きいとの見通しを明らかにした。欧米の景気の先行きがあやしくなってきた。にもかかわらず、株式市場は堅調だ。明らかにファンダメンタルズとの整合性はとれない。
中央銀行による異次元金融緩和政策は継続、若しくは強化せざるを得ない状況であり、ますます過剰流動性(ジャブジャブの資金)が金融市場を支えるとの市場の見方は正しいのだろうが、本当にそれで良いのだろうか?
市場参加者にとっては、いつ壊れるかわからないマーケットをいつまでも指を咥えて見ているわけにはいかない。最後はつかまることを覚悟しながら、買われるんだったらついていくという投資行動が当面続くのかもしれない。
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