暇なときに 9月入学実施は見送り、欧米の大学の対応は?
9月入学は実施されない。今まで通りだ。受験生とその保護者は、状況次第では例年と比べて若干日程が後ずれするということはあるかもしれないが、例年通りの受験のスケジュールだと思って準備を進める必要がある。また、年長組に進級だと思っていた自分の子供がいきなり小学1年生になることもない。予定通り4月に年長組へ進級することになる。
受験生のことを考えると、9月入学の実施は、何が何でも3月卒業、4月入学ではなく、状況によっては卒業を5月、6月に変更することも可能だし、受験の日程も一番寒い時期ではなく、来年の7月、8月に実施することも可能だ。従って9月入学は、新型コロナの第2波のリスクを排除できない以上、柔軟な対応が可能であり、悪くないと思っていたが、9月入学を実施するには山のように解決しないとならない問題があるとのことだ。今回の決定が覆ることはないだろう。
今回の見送りの決定を残念に思っている人たちも少なからずいるはずだ。海外への留学を考えている学生、日本への留学を考えている外国人留学生、そして外資系企業のサマーインターンシップを検討している学生にとっては残念な結果だろう。特に外資系企業のサマーインターンシップは、長期間実施されることが多い。その多くは欧米の大学のスケジュールに併せて6-8月に開催されることが多いため、日本の大学から4-10週間のインターンシップにフルに参加するのは、工夫をしない限り難しい。新型コロナの影響で今年は難しいと思われるものの、日本でのインターンシップに参加すると、会社によっては、世界中のインターンが一堂に会す集合研修が海外の本社で開催されることもあり、学生にとってその体験はとても貴重なものだ。
ところで、今回の決定は受験生のことを考えて決まったものなのだろうか?
自民党の作業チームが纏めた提言書では、「9月入学」には、国民的な合意や、一定の期間を要するとして、「今年度・来年度のような直近の導入は困難だ」としている。これを受けて、安倍総理は今年度や来年度からの制度の導入を事実上、見送る方針だと報道されている。「緊急事態宣言が解除され、学びの保障をしっかりと自治体などと取り組んでいるときに、直近の今年度あるいは来年度の、法改正を伴う形での制度の導入は難しい」とのことだ。
提言書では、今後も議論は継続し、専門家の意見や、広く国民の声を丁寧に聴きつつ、検討するよう求めているが、リモート授業を含め、足許検討しないといけないことも多く、近い将来の9月入学実施の可能性は遠のいた。
新型コロナの第2波が来るか来ないかは誰にもわからないが、私が気になっているのは、仮に来てしまったらどうするつもりだろうということだ。例えば1月に学校でクラスターが発生した時にその濃厚接触者の試験はどうなってしまうのだろう?
文部科学省で働く官僚は、寝る時間もないほど様々なことを議論しているだろう。しかしながら、我々の耳に入ってくる情報は限られ、政治家は、仮定の質問には答えない。各自治体は、4月入学を実現すべく、仮に学校での対面授業が難しい状況になっても、リモートできちんと授業が継続できるような準備を進める必要がある。
日本では殆どの学校が再開した。学校での感染拡大は何としても防ぎたい。当然ながら、先生たちには4-5月の授業の遅れを取り戻す工夫も求められる。保護者からの問い合わせも多いだろう。学校の先生たちにかかる負荷は途轍もなく大きい。
特に小・中学校の先生たちは、通常時においても、教えることはアカデミックな事だけではない。出欠ひとつとるにしても、今までは子どもたちには元気に返事をするように指導していたはずだが、おそらく今は声を出さずに手を上げるようにと指導する必要があるだろう。授業中に生徒がくしゃみをする。当然皆が注目する。マスクを交換して、手を洗いたいという。授業は進めたいけど、この生徒を放っておくわけにもいかない。マスクの捨て方にも注意が必要だ。
通常のスケジュールになれば、手洗い・うがい・トイレ・給食・清掃などには今まで以上に気を使わないといけない。想像しただけでも大変だ。実際の現場では想定外のことが毎日起こるはずだ。こういった先生たちの負荷を軽減するためには、各クラスに授業以外を担当するスクールサポートスタッフなどの増員は不可欠だろう。
政府は、学校の再開が本格的に始まることを受け、加配教員3,100人、学習指導員61,200人、スクールサポートスタッフ20,600人、計約85,000人増やすことを閣議決定している。休業中の学習の遅れを補うために学校が手厚い指導をできるようにする方針だという。生徒、教職員が安心して学校生活を送れることを願っている。
参考までに、英国の名門ケンブリッジ大学は、2020年-21年の授業については、全てリモートで行うことを既に公表している。新型コロナウイルス感染症拡大防止のためのソーシャル・ディスタンシングのガイドラインが変わってくればこの決定は再考するとしている。緊急事態の中、決定は早い。リモートでの授業に不満を持つ学生の中にはギャップイヤーをとる学生もでてくるはずだ。
大学側は、この方針に留学生がどういう反応をするかにも注目しているはずだ。留学生の学費は通常の場合自国民より高いことが多い。収入源であるサマースクールが例年通り開催出来ない大学もあり、一定割合の留学生を確保することは学校経営上極めて重要だ。
その他の欧米の多くの大学は、現在秋から始まる学期の対応について引き続き検討中だ。世界中で新型コロナ感染の第1波が収束していることが大前提だが、例えば、例年より若干早く8月から対面授業を始めて、寒くなるサンクスギビング休暇の前で前期を終え、冬休みを長くし、後期については新型コロナの状況次第で、対面授業、リモート授業を決めるなんていう学校も出てくるのではないだろうか?
Comments