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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

暇なときに 「管理の道具」 5/12/2020 火曜日

2020/5/12付日経新聞春秋より抜粋。

「われわれの文明は、印刷された書式の魔力にとらわれている」。「マネジメントの発明者」といわれるピーター・ドラッカー氏は、主著の「現代の経営」(上田惇生(あつお)訳)でこう書いている。文書の定型な書き方を規範とみなし、柔軟さがうせる様子を批判したものだ。

よくある間違いは、報告や手続きを上からの管理の道具に使うことだとも指摘している。工場長は自らの仕事には必要のない情報も集めて本社に知らせるようになる。現場の社員が報告書の作成に時間をとられ、本来の仕事がおろそかになった保険会社の例も挙げている。無益な作業が組織全体で増殖していく愚かしさだ。

(中略)

手続きが「アマゾンのジャングル」のようにはびこっていた組織が、窒息しそうな状況を打開した例をドラッカー氏は紹介している。あらゆる報告を2カ月廃止し、どうしても必要なものだけ復活させることにした。すると報告の4分の3は不要だったという。「現代の経営」は刊行から60年以上たつ。今なお示唆に富む。

笑えない。役所では自分達に関連する書類はどんどん廃棄しているみたいだが、個人に要求する申請書類はかなり複雑だ。

民間の会社でも、こういう会社は非常に多い。それもその報告に何個もハンコがあるケースもあるだろう。日本だけではない。グローバルに、顧客とのやり取りは全てシステムにインプットするように、従業員、特に営業に対してコールメモ(面談・電話での会話のメモ)を要求する会社が多い。そうやって顧客情報をデータベースで管理し、社内で情報を共有し、顧客へのサービスを向上させようというのが偉い人たちからの説明だ。なるほどと思うが、実際にやってみると結構な手間だ。

加えて、ドラッカー氏が言うように、これらの報告を上からの管理の道具に使っているケースが多い。成績が上がっていないと、「面談の数が少ない。何でこれだけしか電話していないんだ」とマイナス評価に使う。リストラを行う時には会社にとって都合の良い材料だ。中身についての議論になることは殆どない。沢山面談しているし、電話の数も十分な場合にプラス評価に使われるなんてことはない。中間管理職は現場の人間にコールメモを書くようにとうるさく言うことになる。現場は「こんなの書いたって誰も読んでいないじゃないですか。そんな時間があるなら客に電話させてくださいよ」。中間管理職は完璧に板挟み、「まあ中身はいいから書いてくれよ」と部下に頼むことになる。

本来の目的が素晴らしくても、使われ方によって、まったく役に立たないものになる。

私は、この60年前からかかえている問題はもうすぐ解消されるだろうと考えている。AIに電話で話したい人の名前を言うと自動的に電話、若しくはチャットが繋がり、その内容が直接データベースに書き込まれる。顧客へメールを送るとそれが自動的にデータベースに直接書き込まれる。顧客との面談の内容も録音に基づき、AIがきれいにレポートに纏めてくれるようになるだろう。AIのほうから、この顧客を訪問しましょう、電話をかけましょう、チャットしましょう、と教えてくれる時代になる。

人が山のようにいた時代は、無駄な会議をやって、無駄な報告書を作っていても会社は回った。実は幸せなことだったのかもしれない。これからは、人手不足の時代だが、AIが人に変わってやってくれる時代だ。

ところで、AIはどんな仕事が得意か?

AIは、問題がはっきりしているもの、その問題に正解のあるもの、には滅茶苦茶強い。解決策をあっという間に提示する。従って、マニュアルが細かく定められているような仕事ほどAIは得意だ。それも物凄いスピードで処理し、間違わない。これからは引継ぎも必要がない。AIロボットはコピペすればいくらでも複製が可能だ。これからの人間に求められる能力は、問題がはっきりしないもの、その問題に正解がないもの、について問題を明確化にすることだ。問題を明確化することが出来れば、大体のことは解決策を見つけることが出来る。

新型コロナで、期せずして、大企業は本格的に在宅勤務を導入せざるを得ない展開となった。バックアップサイトも機能するようになった会社が多い。本社・バックアップサイト・在宅とグループを3つ作れば、どこかで感染者が発生しても、残りの2つのグループで業務を継続することが出来る。在宅勤務を実施することで、従業員の自宅に必要なIT関連のセットアップも整っていく。

大企業から始まり、中小企業にもこの動きは今後広まっていくはずだ。何故かと言えば、在宅勤務は会社の立場で考えると結果的に労働者の生産性が上昇するからだ。通勤時間がない。従業員は、起きた直後から寝る直前まで働くことが出来る。テレビ会議システムもどんどん良いものがでてくるだろう。スマホと一緒だ。便利な働き方は広まるだろう。そして、働き方は、加速度的に変わっていくはずだ。

さぼる人はいないのだろうか?

会社にいて真面目な顔して席に座っていても、何もしていない人は多い。チャーハンと餃子でも食べてしまった日は、午後3時頃までは仕事にならなかったりする。だから大丈夫だ。時間で管理される働き方から、職務で管理される形に変わっていくだろう。ジョブ・アサイメントは今まで以上に細かく設定し、評価基準も明確にする必要がある。この点をはっきり出来れば、在宅勤務の生産性はどんどん向上するはずだ。残業代はない。パフォーマンスに応じて処遇される。

仮に上司から言われたことをマニュアルに沿って行うだけの人は、今後AIに仕事を奪われるだろう。その部分だけを見れば、AIの方が圧倒的に優秀だからだ。

さぼる人は論外だ。自分の為にならない。これからの「管理の道具」は実際の自分のパフォーマンスだ。結果がついてこないと評価は上がらない。従業員のジョブ・アサイメントがはっきりすると、中間管理職のやることは減っていく。権限の委譲が進み、結果として組織はどんどんフラット化していく。

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